日経ものづくり 特報

工場安全のつくり方

リスクアセスメントは
やすきに流れては仕損じる



工場安全に対する意識が高まっている。中でも災害予防の切り札として期待されているのがリスクアセスメント。労働安全衛生法の改正により,ほとんどの工場で義務付けられたため,導入を急ぐ企業が多い。既に稼働している設備に比べて新たに導入する設備の方が難易度は高いが,この強敵への対応が手薄になっては,災害予防という本来の目的を達成できない。

 「工場の安全性を高めるための手法として,リスクアセスメントに関心が集まっている。しかし,多くの企業はリスクアセスメントの活用法に悩んでいるのが実情だ」――。ブリヂストン安全管理部主任部員の水野恒夫氏は,企業によるリスクアセスメント活用の現状をこう指摘する。
 同氏が懸念している事態は,ユーザー企業が不十分な理解のままリスクアセスメントに着手すること。その対象として既に稼働している設備(現有設備)ばかりが世間で強調されていることを問題視している。
 リスクアセスメントの対象は,現有設備と将来導入する設備(新規導入設備)の二つだ。現有設備の対策が強調されているわけだが,より重要なのはむしろ新規導入設備のリスクアセスメントだと,同氏は主張する。

新規導入設備の対策を急げ
 工場でのリスクアセスメントに取り組む企業が増えるのは,もちろんよいことだ。安全機器の供給側であるオムロンインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーセーフティコンポ事業部事業部長の藤本茂樹氏は「設備を使う側の意識が高まっている」と証言する。
 同じく安全機器メーカーのIDECでは,顧客向けに工場安全関連のセミナーを開いていたが,最近になってその依頼が急増したという。「CSRの観点から,消費者安全だけでなく工場安全にも取り組む企業が増えてきた」(同社常務執行役員研究開発&マーケティング戦略担当マーケティング戦略本部長の藤田俊弘氏)。
 こうした動きの背景にあるのが,2006年4月に施行された改正労働安全衛生法である。改正法においてリスクアセスメントは「努力義務」。ただし,従業員数が50人以上の工場では事実上義務化されたとみてよい。

日経ものづくり 特報
図●ISO12100の示す安全方策
(1)~(4)の順番で実施する。番号が若いほどリスク低減効果が優れている。