日経ものづくり アイデアコーナー

便器後端部を隠さない温水洗浄便座 【TOTO】

3段スライド方式のノズルで収納寸法を短縮

 便器に求められる性能の一つが,清潔さを保てることだ。各メーカーは,外形の凹凸や部品間のすき間を小さくし,汚れにくくて清掃しやい製品としている。しかし,便器の上に温水洗浄便座を設置すると,便器の後端部が隠れてしまい,掃除しづらいという課題があった。
 そこでTOTOは2006年8月に発売した「NEWネオレスト Aタイプ」において,中央部分がえぐれたような形状の「フチなしウォシュレット」を採用した。便器の後端部を斜め上からでも見通せるため,清掃しやすくなった(図)。
 このような形状とするためにノズルを小型化した。従来のノズルは一体部品で,使用時にノズル先端を便器の中央付近まで出すためには,ノズルの長さ分のスペースを後ろに確保する必要があった。
 これに対してNEWネオレスト Aタイプでは,ノズルを三つの部品に分割し,自動車のアンテナやコーナーポールのように伸縮できるようにした。これにより,収納時のノズル先端位置が従来よりも約50mm後方となり,中央部分がえぐれたような形状とできたわけだ。

日経ものづくり アイデアコーナー1
図●温水洗浄便座の形状
(a)新しい温水洗浄便座では,便器の形状に沿って中央部分がくぼんでおり,清掃時に便器の後端部を見やすい。(b)従来は,温水洗浄便座が便器の後端部を覆い隠すようになっていた。


誰にでも開けやすい缶 【キリンビール】

タブ下の穴を広く深くし,タブをたわませる

 缶の開け方は人によってさまざまだ。指の大きさや力の強さによって,プルタブに添える指の種類や本数などが異なってくる。実際,キリンビールが約250人に対して「缶の開け方」に関する調査を実施したところ,開缶方法には大別して「人さし指」「親指」「中指」「人さし指と中指」「横開け」と5通りあることが判明した(図)。特に,女性や高齢者で多様となる。
 そこでキリンビールは,どの指でも開けやすい「かんたん缶」を開発した。缶のプルタブへの指掛かりを現状の缶よりも良くし,小さな力で缶を開けられる。
 開発に当たっては,人が感じる「開けやすさ」とはどういうものかを感性工学的に解析。その結果,「指掛かり性」「開缶時の力のかかり具合」「開缶時の固さ(痛さ)」の3要因が大きく寄与していることが分かり,それぞれの改良を検討した。
 指掛かり性の改良ではまず,缶の上ぶたに設けるヘコミの形状に「ダブルフィンガーデボス」と名付けた形状を導入した。この形状は2段構造になっており,人さし指で缶を開ける場合に必要な「狭く深いくぼみ」と親指や中指で缶を開ける場合に必要な「広く浅いくぼみ」を同時に満たす。
 また,「人さし指と中指の2本で開ける」や「指を横向きにして開ける」など,指の姿勢や本数にかかわらずに指掛かり性を良くするため,プルタブ先端部(指を添える部分)の下面と缶ぶた上面のすき間を約0.5mm拡大した。プルタブ先端部を薄くすると同時に,プルタブを缶ぶたから浮き上がらせるための突起(バブルポイント)の高さを増している。

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図●缶の開け方
プルタブに添える指の種類,本数,向き,方向でさまざまな方法の開け方がある。これらのどの方法でも開けやすい缶を目指した。