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コスト競争力のノウハウ

田野倉 力
2006/08/28 06:40
 
日経ものづくり 特集

コスト競争力のノウハウ
価格をぐっと抑えた製品を提供することが勝ち残るための「必須の条件」となりつつある。どのようにコスト削減をしたらよいかで各社は頭を悩ませている。参考になるのは,ギリギリまでコストを詰める必要がある「低価格製品」だ。ただし,いわゆる「安物」とは一線を画す。基本機能に的を絞って向上させ,その分,価格を抑えた製品のことだ。こうした優れた低価格製品から「最強のコスト競争力」を生み出すためのノウハウを抽出する。


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 「我々の仕事は,コストとの戦いだ」(愛三工業第1製品開発部スロットル開発室チームリーダーの河井伸二氏)。この言葉が今,多くの日本メーカーを代弁する。競合よりも高機能・高付加価値を内外から期待される一方,コスト削減を実現しなければならない状況に追い込まれているからだ。「この5年で機能は2倍になった。だが,価格は半減したため,コストも半分以下にすることを強いられた」(キヤノンインクジェット事業本部インクジェットデバイス開発センターインクジェットデバイス開発推進第一課課長の山中祥氏)。キヤノンが語るこうした厳しいコスト削減圧力下に置かれていない日本メーカーを探す方が難しい。

基本機能の選択と向上
 現在,世界で「低価格製品」が売れ,そうした製品を市場投入するメーカーが頭角をあらわしている。大手メーカーよりも価格を抑えた船井電機の液晶テレビ受像機は,2006年第1四半期に北米市場の出荷台数シェアが4位にまで浮上した。
 薄型テレビ受像機の専業メーカーであるバイ・デザインも,同じく液晶テレビ受像機で日本の大手メーカーよりも5万円は安い製品を提供し,売上高はうなぎ登りだ(図)。キヤノンはインクジェット・プリンタで,複写やスキャンもできる複合機能タイプながら1万円以下でも買える「PIXUS MP170」を市場投入し,2005年に39.5%と圧倒的な国内出荷台数シェアを占めている。

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図●バイ・デザインの売上高の推移
2003年6月に設立後,急激に売上げを伸ばしている。2006年度は200億円も視野に入れる。写真はバイ・デザイン社長の飯塚克美氏。


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 「大手メーカーが(事業を)断念し始めたころが,うちにとって一番面白い」。こう主張する船井電機社長の船井哲良氏は,2006年度を同社の液晶テレビ事業の「元年」と位置付けた。従来より大型となる26インチ型と32インチ型,37インチ型の液晶テレビ受像機を市場投入する計画を立てたのだ。例えば,日本市場では2006年7月に地上/BSデジタルチューナを搭載した32インチ型の液晶テレビ受像機を実売想定価格15万円前後で発売している(図)。
 今が本格展開の時と判断する理由は,船井電機のビジネスモデルにある。同社は市場を開拓するような最先端製品には背を向け,普及が拡大して成熟領域に入り始めた「コモディティー製品」に絞って事業を展開する。大手メーカーに対してコスト競争力に強い自信を持つからだ。

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図●船井電機の液晶テレビ受像機「FL-32D4」
32インチ型で実売想定価格15万円。背景は同社社長の船井哲良氏。


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 キヤノンのインクジェット・プリンタ。国内出荷台数シェアで常に40%前後を占め,首位を争う人気を誇る製品だ。ところが,「コスト競争は相当厳しい」とキヤノンインクジェット事業本部インクジェットデバイス開発センターインクジェットデバイス開発推進第一課課長の山中祥氏は言う。電気系の設計を手掛ける同社同開発センターインクジェット電気12設計室室長の池田哲人氏も「かつては設計(リソース)の重心は性能側にかかっていたが,今ではずっとコスト側に寄っている」と証言する。
 それも無理はない。5年前の2001年と現在を比べると,例えば,本来の印字機能にスキャナや複写機能などを加えた複合機能タイプのインクジェット・プリンタの場合,印字の速度と解像度は2倍に高まった。スキャナの解像度に至っては4倍だ(図)。

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図●キヤノンの複合機能タイプのインクジェット・プリンタ「PIXUS MP450」
競争激化により,インクジェット・プリンタの価格は5年で1/2に下落。そのため,同社はコストも1/2に短縮しなければならなかった。


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 中国にはものづくりを低コストで行うインフラが整っている(図)。しかし,中国で本当に安く,しかも品質の高いものづくりを実現するためには,押さえるべきポイントがある。
 どうしたら中国でさらにコストを削減できるか。お手本にすべきは,意外かもしれないが,実は繊維メーカーである。繊維業界は他の製造業とは比較にならないほど価格競争が激しいため,コスト削減に関して最も敏感に反応するからだ。
 現在,繊維メーカーが工場を建設するのは中国の内陸側である。彼らが発展著しい沿海部から離れた奥地に向かって積極的に進出しようとするのは,土地の取得費用が安いことはもちろんだが,主眼は人件費の抑制だ。

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図●キヤノンの中国工場
セル生産を実行し,コスト競争力を高める。

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