ソフトウエアの品質,信頼性向上の手段として「形式手法(formal methods)」が注目を集めている。産業機器などに向けた国際安全規格「IEC 61508」や,自動車向けの同規格「ISO 26262」のドラフトに盛り込まれるなど,その名前が登場する頻度が増えている。しかし,その実像は日本でほとんど知られていない。形式手法は,英文で「methods」と複数形で表されることからも分かるように,本来,多様な手法の総称である。こうした幅の広さ,多様性を持った分野にもかかわらず,形式手法全体を俯瞰する文献は非常に少ない。現在は「形式手法が良いか悪いか」という大まかな議論ではなく,形式手法の中の各技術を個別に理解し,採用を検討すべき時期に来ている。そこで,同分野の研究に取り組む国立情報学研究所 教授の中島震氏に,形式手法の全体を俯瞰し,各技術の概要を解説してもらう。 (進藤 智則=本誌)

中島 震
国立情報学研究所 総合研究大学院大学 科学技術振興機構SORST