舛岡 富士雄氏
東北大学 教授

——1994年に東芝を退社してから10年たった2004年に裁判を起こしましたが,どのような経緯があったのでしょう。

 2000年前後から東芝はNANDフラッシュ・メモリで大きな利益を上げるようになりました。ですが,私が退社してからの特許に対する報賞金は年間10万円程度とわずかでした。そこで,当時の東芝の社長に手紙で抗議しました。これにより,年間10万円だった報奨金は年間100万円に増えました。
 その後,東芝のNANDフラッシュ・メモリ事業は数千億円の売り上げ規模に拡大しました。日本の大手電機メーカーが軒並み半導体事業を切り離した中,東芝は事業として存続させています。これは,NANDフラッシュ・メモリというオリジナリティーのある技術で大きな収益を得ているからです。NANDフラッシュは今後も,DVDやHDD,磁気テープといった媒体を置き換えて,5兆円市場に成長する可能性があるとみています。ですから,それを開発した技術者がそれ相応の報いを受けることができても良いのではないでしょうか。