日経ものづくり キラリ輝く中小企業

小原歯車工業

標準歯車の小原歯車工業
受注即納品のスピードが売り

 機械部品の中で最も種類が多く,標準化が難しいといわれた歯車。その標準化を日本で初めて実現したのが小原歯車工業だ。形状や機能,素材別に独自の規格で製造する同社の歯車は「KHK標準歯車」と呼ばれる。ラインアップは現在,133品目,約4000種に上る。
 小原歯車の創業は戦前の1935年。当時,国内で多く使われていた英国製旋盤の替え歯車の製造販売からスタートした。旋盤職人にとって歯車の損壊は死活問題。そこで,替え歯車を造り置くことで,これらの加工業者が歯車をいつでも交換できるようにした。
 戦後は,替え歯車で培った経験を基に,各種歯車の標準化に着手。素材も鉄をはじめステンレス鋼,銅,アルミニウム合金,プラスチックへと広げ,食品や家電,工作機械などさまざまな業界で使えるようにした。
 1960年代半ばには,米国式のインチ単位に代えて,国内の一般工業製品に使われるメートル単位に統一するなど,常に標準歯車業界をリードしてきた。
 ただし,いまだに歯車の使用量が最も多い自動車産業では,この標準歯車はほとんど使われていない。とりわけ,駆動系に使われる歯車は自動車の性能を左右するキーコンポーネントのため,各社とも内製,もしくは系列企業で製造するのが一般的だから。従って,標準歯車は歯車業界の中でもニッチ市場の部類に該当する。言い換えれば,ニッチだからこそ,同社の強みが発揮できるわけだ。

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●追加工した歯車


丸ヱム製作所

特殊ねじで競争優位に立つ
ステンねじの丸ヱム製作所

 丸ヱム製作所は1927(昭和2)年創業のステンレスねじメーカー。戦後の一時期までは主に割りピンを製造していたが,1957(昭和32)年には住宅用アルミサッシの締結部品用に国内で初めてステンレスねじの量産に成功。それを契機にねじの専門メーカーに生まれ変わった。
 同社が他のねじメーカーと違うところは,早い時期からパンチやダイなど,ねじ製造に不可欠な工具や金型を内製化してきたことだ(1985年に丸ヱムツールとして分社化)。ねじの品質は工具や金型の精度によって大きく左右されるが,内製化によって品質向上と納期短縮を図り,競争優位を保った。
 しかし1980年代に入ると,安価な輸入品が市場に出回り,売り上げの大半を依存していた建築需要にも陰りが見え始める。そこで,ステンレスねじを中心に,特殊製品の開発に軸足を移した。
 戦略転換後の最初の新製品は,ステンレスねじではなく,1987年に発売した樹脂製ねじの「ファスニー」。素材はポリアミド系樹脂をガラス繊維で強化した複合材。強度があり,熱変形温度も高いことから,金属材料の代替として重宝された。
 最初は樹脂だけの製品だったが,その後,金属ねじの周辺を樹脂で覆うなどの複合製品も開発した。ヤマハ発動機や川崎重工業のジェットスキーのハンドルには,この複合製品が使われている。卑近なところでは,公園の遊具。以前は金属にペンキを塗ったものが主流だったが,同社の複合製品が現われてから,遊具そのものが様変わりしたという。樹脂製品の中には,視覚障害者用誘導警告ブロックというユニークな製品もある。

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●ステンレスねじの試作加工ライン