第20巻 |
広島大学大学院教授 沢 俊行
●初期締め付け状態を考慮しただけでは不十分
●外力が加わるときには,作用位置まで考える
●温度が変化するときには,軸力がゼロになる恐れも
前回まで,ボルトを締め付けるときのボルト軸に生じる引っ張り応力と,ねじりによるせん断応力の組み合わせ応力を見てきました。復習になりますが,ボルトに作用する等価応力σeqと等価せん断応力τeqはそれぞれ,引っ張り応力σとせん断応力τを用いて
と表せました。
ただし,これは締め付けただけの状態にすぎず,実際には,ここに外力が作用したり周囲の温度が変化したりすることでボルトの軸力が変わります。例えば,図。ボルトの座面径とほぼ等しい外径を持つ二つの円筒をボルトで締め付けている様子です(p.148の別掲記事参照)。ここで,初期締め付け力をFf,締め付け長さ(二つの円筒の高さ)をツf,円筒の内径(ボルト穴径)をdh,外径をdo,円筒の縦弾性係数をEc,ボルトのそれをEb,ボルトの呼び径をdとしましょう。
図●外力が作用するボルト締結体
ボルトの座面径とほぼ等しい外径を持つ二つの円筒をボルトで締め付けた。