日経ものづくり 事故は語る

松下製石油温風機「欠陥」の真実
ホースの亀裂だけではなかった

 経済産業省が「緊急命令」を発動する事態にまで発展した,松下電器産業製石油温風機にかかわる一連の事故はすべて,強制給排気(FF)式と呼ぶタイプで発生した(図)。JIS S 3030「石油燃焼機器の構造通則」によれば,問題のFF式は「給排気筒を外気に接する壁などを貫通して屋外に出し,送風機によって給排気筒を通して強制的に給排気を行う方式」。構造は各社各様だが,同社のFF式石油温風機の場合には,給気系は途中から,混合気用の空気が通る「1次エアホース」と,完全燃焼させるための空気が流れる「2次エアホース」に分かれていた。
 2005年に発覚した4件の事故にはFF式に加えて,二つの共通点がある。石油温風機の2次エアホースに最大幅約5~30mmの開口部を持つ孔が生じていたことと,給排気筒,燃焼用送風機,熱交換器のどれかに異常が認められたことだ。
 例えば,1人が死亡,1人が重体となった,2005年11月21日の長野県上田市の事故では,2次エアホースの送風機側湾曲部の外側に開口部約12×深さ約13mmのV字形の孔が存在した。加えて,熱交換器には不完全燃焼により発生したすすが一部を閉塞するほど付着しており,給排気筒にはつぶれによる変形やハチの巣が見られた。
 製品評価技術基盤機構(NITE)は,こうした二つの共通点に着目し,同社から資材をはじめ事故発生状況に関する情報などの提供を受けて,事故の真相解明に迫った。

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図●松下電器産業のFF式石油温風機「OK-3537」
25機種15万2132台が回収および点検/改修の対象となった。2006年6月30日時点における所有者把握数は67.4%に当たる10万2499台。