日経ものづくり ドキュメント
新シリーズ

プロデュース 中小企業上場の軌跡 第6回

激震走る

【前号のあらすじ】
ベンチャーキャピタルからの投資も取り付け,はずみがついたプロデュースの電極塗布装置の開発。製品化になんとかメドがついた。だが,社長の佐藤英児の頭にはもう次のビジネス,検査装置の製造販売があった。ユーザーが現状の検査装置に不満を抱いていることに目を付けたのだ。プロデュースは長野県との企業連携のプランに参加し,佐藤は新たに長野県松本市に検査装置の製造拠点となる工場を構えることを決める。しかし,手探りで始まった検査装置の開発・製造は最初から大幅な納期遅れとなった。松本工場を率いる高野博は,我が身のふがいなさに思わず佐藤の前で涙を見せてしまう。



 本社のある新潟は長岡で,プロデュース社長の佐藤英児と久方ぶりに夜通し飲み明かした高野博。翌日には,工場の立ち上げを任されている長野は松本に戻った。
 槍ヶ岳をはじめ3000m級の山々が連なる北アルプスを一望する臨空工業団地。その風光明媚な場所に,松本工場はある。ところがその中は,周囲の美しい自然とは対照的にすさんでいる。思うように進まない仕事,全従業員が一つになり切れない社内の沈んだ雰囲気・・・。打開策が見えないまま時は過ぎ,2005年も全国各地から登山者が押し寄せる夏を迎えた。
 すると松本工場に,4月と6月の,納期遅れに伴う2度にわたる受注停止以来という注文が舞い込んだ。今度こそ納期遅れは許されない。何より,あの屈辱は二度と味わいたくない。けれど,これまでと同じやり方を踏襲していては,やはり同じ結果を招き赤字を垂れ流すに違いない。悩む高野の脳裏に,涙に暮れたあの長岡での佐藤の言葉がよぎる。
「高野,売り上げ100億円を一緒に目指そう」
 目標は,天を突く槍ヶ岳のように高く険しい。しかし,佐藤と交わした男の約束を果たすためには,ここでいつまでも足踏みをしているわけにはいかない。これを機に松本工場を改革する。高野は前に進むことを考えた。