日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第8回

一品個別受注生産へ適用

村山 明
中部産業連盟 東京本部 
主席コンサルタント
山口 郁睦
同連盟同本部 コンサルタント

今回は,一品個別受注生産タイプの工場に,トヨタ生産方式を導入するポイントを解説する。このタイプの工場では,受注する製品の仕様に繰り返し性がほとんどなく,管理が難しい。効率良く生産するためには,きめの細かい計画を立案した上での平準化生産や流れ生産,それを実現するための多能工化などの取り組みが求められる。(本誌)


 前回に引き続きトヨタ生産方式を導入していくポイントについて,代表的な生産形態を取り上げて解説する。今回は,「一品個別受注生産」タイプの工場を取り上げる。

繰り返し性がなく多くのムダ
 一般的に一品個別受注生産タイプの工場では,生産する製品は似ていてもほとんど仕様の繰り返し性がなく,顧客の要求に基づいて新規に図面を作成することが多い。一つの製品の金額は比較的高く,納期は数カ月と長い。製品自体の仕様は複雑で部品点数も多く,生産工程の数も多いのが一般的。大型電気設備,省力化装置,工作機械,造船や金型などがこの生産タイプに該当する。
 主な問題点・課題には,以下のようなものがある。
●受注の変動が激しい。毎月の受注量が安定していないため,繁忙度の差が激しい。また,納期変更が多く発生するので,当初の計画が変更されるのが一般的である。その結果,ムダな人件費の発生や納期遅れの発生が常態化している。
●仕様の繰り返し性がないため,生産日程計画に使用する標準工数や基準日程,発注計画と在庫管理基準などの管理基準値が整備されていない。そのために,機械や人の負荷計画,工数計画が的確に立てられておらず,能力不足による納期遅れや工数のムダが発生している。また,外注に極端に依存していたり長期滞留在庫を多く抱えていたりする企業も多い。