日経ものづくり 詳報

液体の表面張力や粘度,弾性を
非接触で計測するシステム

東大生研と京都電子工業が共同で製品化

 東京大学生産技術研究所は,液体や高分子材料,ゲルなどの軟らかい物質の表面張力,粘性,弾性を非接触で計測するシステムを開発した(図1)。塗料や接着剤などの乾燥・硬化過程のモニタリングや,溶融した高分子材料や金属などの物性計測などでの応用を見込む。既に試作機を塗料メーカーや家電メーカーに納入しており,試験運用されている。
 計測方法としては,電場による試料の変形を計測する「電界ピンセット法」を採用した。10μL程度の微小量で計測でき,計測時間も水の100万倍の粘性を持つ試料で約10秒程度と短い。精度面では,誤差が約5%以内での計測が可能だという。
 電界ピンセット法では,試料の表面近くに金属製の探針を配置し10~200V程度の電圧を加える。試料に発生した電場による力(マックスウエル応力)は,試料の表面を持ち上げようとする。この力と表面張力(ラプラス圧)が釣り合う位置まで表面が持ち上がるため,この最大変位を計測することで表面張力を算出できる。
 粘性の算出には,表面が変位する速度の計測が必要だ。表面張力が等しい二つの試料に同じ電圧を加えれば最大変位に差は出ないが,粘性が高いほどゆっくりと変位し,粘性が低いほど速く変位する。

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図●計測システム
試料に電圧を加える探針,変位を計測するレーザ発振器と光センサ,顕微鏡に取り付けたCCDカメラなどで構成する。