日経オートモーティブ 連載

事例に見るPLM活用・第3回

欧州メーカーで採用進む
構造最適化ツール

車体部品の剛性向上や、部品に加わる応力を低減できる設計コンセプトを提示してくれるのが構造最適化ソフト。ドイツBMW社やAudi社など欧州自動車メーカーは、設計プロセスにこのソフトを適用し、開発期間短縮やコストダウンに結びつけている。ボディとサスペンションにおける三つの適用事例をみていこう。

ヴァイナス
CAE技術部長
森田 真児


 自動車開発における3次元データおよびCAEの活用はますます進んでおり、最近ではCAEを製品開発の上流段階から活用するようになってきた。例えば、デザイン段階の3次元データを利用して、ボディの構造解析や衝突解析を行うことが一般化している。
 ただ、CAEは設計者が考えた構想設計案をコンピュータ上で評価し、剛性や強度などの設計基準を満足しているかを検証するもの。コンセプトを考えるのはあくまでも設計者の役割だ。
今後さらに設計品質を高め、しかも作業の効率化を進めていく上で、これまでのように設計者の「勘」や「経験」に頼るだけでは限界がある。こうした点に着目した欧州自動車メーカーは、CAEによる解析を設計に生かす仕組みが不可欠と判断し、構造最適化ソフトを導入して成果を上げている。

CAEで構造を最適化
 構造最適化ソフトは、与えられた条件で強度などを計算する汎用構造解析ソフトと異なり、どうすれば剛性を向上できるかの設計コンセプトを提示してくれるのが特徴だ。このため、特に詳細な形状を与えない最大設計空間から、剛性の高い理想的な構造を求めるといったことができる。
 最適化ソフトの一例が、当社が国内での販売を行っているドイツFE-DESIGN社が開発したノンパラメトリック構造最適設計システム「TOSCA」である。ソフトは大きく分けて、位相最適化、形状最適化、ビード最適化という三つのモジュールとオプションのモジュールで構成する。