日経オートモーティブ 連載

制御技術はチームで学べ・第1回

低下する技術者の質
基礎学力の向上が必要

自動車業界では、制御システムの技術者が不足している。筆者は、自動車関係の技術者に対する、制御システムの教育を担当している。技術者は、自分を取り巻く環境や自分に欠けた部分を理解するほか、制御の読み・書き・そろばんに相当する基礎学力の取得が求められる。

トヨタテクニカルディベロップメント
開発サポート本部 教育事業推進部 技術教育推進室 主任研究員
大川 進


 日本の自動車産業は拡大を続けており一見好調であるように見えるが、制御システム技術者の教育については、早急に対策しなければならない状況にあると筆者は考えている。背景には、自動車の急速なエレクトロニクス化と、海外メーカーの競争力の強化がある(図)。日本の自動車産業が今後も競争力を維持・発展させていくには、エレクトロニクスを中心とした基礎技術力の強化、そしてチーム活動による研究・開発の教育が欠かせない。この連載講座では、第1回目で制御システム技術者を取り巻く環境と問題点、2回目でチームワークでの取り組み方法を中心に解説する。

急速なエレクトロニクス化
 内燃機関とモータで構成するハイブリッドシステムは、量産自動車としては初めて、主機関にモータを使用した画期的な技術である。
 「ハイブリッド自動車」に対する市場からの反響は大きく、最近では大型乗用車やSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)にも搭載されるようになってきた。これまでは内燃機関や自動変速機、懸架装置、車体などの「機械工学・機械技術者」が自動車技術者の主流であったが、「モータ・パワーエレクトロニクス・制御技術」「車両予防安全を主題とする車両の運動制御・情報通信技術」の両方を身に付けた新しいタイプの技術者が大量に、しかも早急に必要になっている。

日経オートモーティブ 連載
*物真似:生産は極めて小規模。物作り:少量生産できる体制。物造り:大量生産できる体制。物創り:創造して大量生産できる体制。
図●自動車技術の流れと日本の自動車産業の進むべき道