日経オートモーティブ 解説

生産・販売のグローバル化や、パワートレーンの多様化などにより完成車メーカーの技術者不足が深刻化している。このため日本ではあまり一般的ではなかった開発業務のアウトソーシングが始まった。まだ一部の業務にとどまっているが、アウトソーシング化は世界的な流れで、今後日本でもますます広がりそうだ。

 ドイツBMW社の「MINI」、米GM社の排気量2.8~3.6Lの「Global V6 Engine」、米Ford Motor社の「Escape Hybrid」・・・。一見、何の関係もなさそうなこれらの間には、一つの共通点がある。いずれも最近、英国のエンジニアリング会社であるRicardo社が、それぞれの企業の技術者と共同で開発プロジェクトに携わった事例だということだ(図)。
 このように、新型車や新型パワートレーンの開発に、外部のエンジニアリング会社を活用することは、欧米ではすでに一般化している。これに対し、日本の完成車メーカーは、開発業務の一部をアウトソーシングすることに対して消極的だった。
 ところがここに来て状況が大きく変わってきている。「日本企業からの依頼が急速に拡大している」(英Ricardo社の日本法人であるリカルドジャパン社長の岡村暁生氏)、「アウトソーシングのニーズはものすごく強い。日本での売り上げはこのところ前年比2桁増で推移している」(オーストリアのエンジニアリング会社であるAVL社の日本法人エイヴィエル ジャパン社長の日比野正寛氏)というのだ。

グローバル化で開発人員が不足
 状況を変えたのは、開発人員の圧倒的な不足。その最大の要因となっているのが、国内の完成車メーカーのグローバル生産台数の増大である。たとえばトヨタ自動車は、グループでの世界販売台数が、1999年度の518万台から、2006年度は845万台へと、7年で6割以上も増える見通し。同じくホンダは、グローバル販売台数が2000年度の258万台から2006年度は372万台と、4割以上も増える。
 しかも、こうした拡大戦略は今後も続く見込みだ。トヨタは2010年のグローバル生産台数を1000万台に、ホンダは450万台以上に、それぞれ伸ばすと見られている。このように世界での販売台数が増えると、たとえ同じ車種でも、仕向け地に応じたきめ細かい改良が必要になる。現地の嗜好に合わせた外観部品の変更や、現地の道路事情に合わせたサスペンション・エンジンセッティングの変更、環境基準や安全基準の違いに合わせた仕様の変更などだ。

日経オートモーティブ 解説
図●英Ricardo社が開発に協力したプロジェクト
(a)ドイツBMW社の「MINI」(b)米Ford Motor社の「Escape Hybrid」(c)米GM社の「Global V6 engine」