日経ものづくり 材料力学マンダラ

第19巻
組み合わせ応力が生じる三角ねじ

広島大学大学院教授 沢 俊行


●締め付けトルクはねじ面のトルクと座面のトルクの和
●ボルトに作用する引っ張り応力は初期締め付け力で決定
●ボルトに発生するせん断応力はねじ面のトルクから計算


 前回は,ねじの基本に触れ,力の伝達に利用される四角ねじの効率について考えました。しかし,もともとねじの話題を持ち出したのは,組み合わせ応力の実例を紹介するため。そこで今回はその本来の目的に返って,締め付け用の三角ねじを取り上げます。
 三角ねじには締め付けに伴い,引っ張り応力とせん断応力が作用します。設計では当然,それに耐えるようにボルトを選択しなければなりませんから,組み合わせ応力を知ることは非常に重要になるのです。
 実際,ボルトに生じる組み合わせ応力を求めるには,締め付けに要するトルクTfが必要になります。そこで,三角ねじの力学的釣り合いを考えましょう。前回と同様,リード角βの斜面で力Fsを加えて重さFfの物体を押し上げる様子を想定します(図)。

日経ものづくり
図●ねじと斜面
リード角βの斜面の上で,力Fsを加えて重さFfの物体を押し上げる様子。