日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第7回

多品種少量個別受注生産へ適用

小坂 信之
中部産業連盟 東京本部 
主席コンサルタント

多品種少量個別受注生産タイプの工場では,納期遵守,リードタイム短縮を強く求められている。今回は,この目的を実現するために,トヨタ生産方式を導入するポイントについて解説する。必要とされる手法は,平準化生産や流れ生産など。設計の標準化や設備の小型化などを具体的には実践すべきだ。(本誌)


 今回は,「多品種少量個別受注生産」タイプの工場を取り上げ,前回同様にトヨタ生産方式を導入していくポイントを解説する。

個別受注がもたらす問題
 多品種少量個別受注生産タイプでは,注文のたびに個別に要望を聞くので,仕様の繰り返し性はほとんどなく,新規の仕様に基づいて生産することが多い。機械工場,板金工場など多くの中小企業に見られるタイプである。
 このような企業でよく見られるのは,類似設計が多いのに図面管理が十分できていないため,設計者の経験と勘に頼った仕様であること。リードタイムの長い材料などは見込み手配で対応しているが,安全を余計に見込むため,材料在庫が過剰になること。さらに,負荷と能力が把握できていないので,納期があいまいであることなどだ。
 総じてこのような生産タイプの企業が目指すべきは「納期遵守」だ。さらにはそれを実現するための「リードタイム短縮」である。