日経ものづくり ものづくりインタビュー

私が考えるものづくり

大嶽 隆司
小糸製作所 代表取締役社長

片手間で教えるのでは
海外拠点に技術は定着しません

おおたけ・たかし
1962年小糸製作所入社,米国シカゴ事務所駐在などを経て1974年同社海外部長, 1979年6月同社取締役営業本部管理部長・海外部長,1983年6月同社常務取締役営業本部副本部長・海外部長,1985年同社専務取締役営業本部長,1987年同生産本部長,1992年7月同社代表取締役副社長,2003年6月同社代表取締役社長,現在に至る。

ランプといえば,昔はガラスで造るものだった。 いつしか樹脂製が主流になり,さらに電子部品が組み込まれるようになった。 光源も,現在のディスチャージ・ランプに続く,次のLEDが見え始めている。 変化が起こると,開発から生産まで一貫して手掛ける企業は頼りにされる。 幅広い技術を追ってきたことが,ものづくりの強みになって生きてくる。

 工場の国内回帰と盛んにいわれていますが,実はあまりピンとこないんです。国内工場もずっと忙しかったものですから,空洞化しかけたという覚えもありません。静岡県にある工場も手狭になってきたため,現在九州(佐賀市)にも工場を設置しようとしているところです。

技術革新でずっと忙しかった
 多忙だったのは多分,自動車のランプが技術面で急激に変化してきたからではないでしょうか。以前は反射鏡と前面レンズの中に白熱電球を入れて造っていましたが,そのうち全体が一体化したオール・グラス・シールド・ビームになりました。その後光源の方式がハロゲンランプに変わり,現在ヘッドランプで主流なのは放電を利用するディスチャージ(High Intensity Discharge,HID)・ランプです。さらに今後はLED(発光ダイオード)になりそうで,既に車体後方のランプにはだいぶ使われています。
 要素技術を見ても,以前はガラスで造っていたのが,だんだん樹脂を扱う必要が出てきました。さらに光源が変化すると電子部品にも手を広げなければならない。ディスチャージ・ランプは放電管ですから,スタジアムの照明などにもよく使われていて,蛍光灯もその一種ですが,スタジアムとか一般の照明ならスイッチを入れた後,少しずつ明るくなって最終的に強い光を出せればいい。しかしヘッドランプはそういうわけにはいきません。最初から高電圧をかけて急速に明るくしなければなりませんし,その後すぐ安定させなければならない。スタータ(始動器)やバラスト(安定器)といった電子部品を自分で開発しなければならなくなるわけです。