日経ものづくり 設計者のための解析入門

第6回 アセンブリ解析のモデル化

部品間の接合と接触を定義
要素の種類でも結果が変わる

部品単体の解析とアセンブリの解析で最も異なる点は,部品と部品の接合部分が存在することだ。接合部分に適切な接触条件を設定するだけでなく,要素の種類や大きさにも気を付ける必要がある。今回は,アセンブリ解析のモデル化における接触条件の設定と要素選択の注意事項を解説する。(本誌)

西浦 光一
積水化学工業 環境・ライフラインカンパニー京都研究所 ESSプロジェクト

 製品の多くは,複数の部品で構成される。製品としての強度を検証・確認するためには,組み立てた状態での解析であるアセンブリ解析を実行しなくてはならない。
 今回は,このアセンブリ解析のモデル化について解説する。部品単体の解析と違って,アセンブリ解析では部品と部品の結合や,接触といった境界条件を設定する必要があるほか,メッシュ作成に当たっては,接触を考慮した要素の選択などが必要になってくる。

接触した場合の動き方を定義
 まず,部品と部品が接触する部分のさまざまな結合方法,つまり接触部分の条件設定について簡単に紹介しよう(図)。部品と部品を結合する場合には,面同士を結合する,エッジ(稜線)同士を結合する,ノード(節点)同士を結合する―といった方法があるが,ここでは主に面同士,エッジ同士の結合について述べる。
 接触部分の条件設定において,まず考慮しなければならないのは,部品と部品が初期状態で接触しているかどうかである。最初はお互いに離れていても,部品の変形や移動によって接触していなかった部分が接触するケースもあるので,注意を要する。
 次に考慮するのは,接触部に部品同士の滑りが存在するかどうかだ。部品同士が完全固着して互いに動かなくなるのか,面またはエッジに沿って滑りが発生し得るのかに分かれる。解析ソフトによっては,接触部分が離れることを許すような条件を設定できる。
 滑りを考慮する場合はさらに,摩擦の有無も定義する。摩擦が存在するのであれば摩擦係数を設定し,接触部分の滑りやすさを制御する。
 節点同士の結合においても,接触条件の分類はほぼ同様だが,より細かな条件設定が可能だ。例えばスポット溶接部分のように,スプリングのような伸び縮みする要素を使って節点同士を結合することも可能だ。
 解析ソフトによっては,アセンブリ解析であることを定義するだけで自動的に部品と部品を何らかの方法で結合してしまう場合がある。定義の仕方や選択される結合方法は仕様書に書いてあるが,前述の方法のうちのどちらかである場合が多いはずだ。

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図●主な接触条件の分類
初期状態で接触しているか否か,接触部分で部品同士が滑るか否か,滑る場合に摩擦を考慮するか否か―など,接触条件の定義ではさまざまな場合を設定できる。