日経ものづくり 材料力学マンダラ

第18巻
意外に習わないねじの基本

広島大学大学院教授 沢 俊行


●組み合わせ応力が作用する典型はボルト・ナット締結体
●ボルトによる締め付けは「斜面」を応用したもの
●ジャッキなどに使う「四角ねじ」は力の伝達効率が問題に


 前回は,延性材料に引っ張りとねじりの組み合わせ荷重が作用したときの応力と強さを調べました。今回は最初に復習を兼ねて,脆性材料で同様の実験を実施してみましょう。
 用いる脆性材料は,直径6mmの鋳鉄「FC400」の丸棒。これに引っ張り荷重を与えてからねじりにより破断させますが,実験の前に予想してみてください。(1)引っ張り荷重を与えずにねじる(2)引っ張り荷重を与えてからねじる―二つのケースで,破断時のねじりトルクはどちらが小さいか。設計者にとって,こうした予想はとても重要なのです。
 まず(1)のケース。引っ張り応力σ(この場合には当然0MPaです)と破断時のねじりトルクTの関係は
  σ=0MPaでT=9.56N・m
でした。
 次に(2)のケース。引っ張り応力σと破断時のねじりトルクTの関係は
  σ=25MPaでT=6.52N・m
  σ=50MPaでT=4.78N・m
  σ=75MPaでT=3.58N・m
となりました。
 この実験結果から,最初に与える引っ張り応力σが大きくなるほど,破断時のねじりトルクTは小さくなることが分かります。つまり,上述の予想の答えは「?A」。組み合わせ応力がかかるケースでは,単独荷重が作用するケースより小さい力やトルクで破壊することになるのです。注意しなければなりません。