日経ものづくり アイデアコーナー

振動を伝えにくいローラガイド装置
【東芝エレベータ】

衝撃による瞬間回転中心でアームを支持

 台湾の超高層ビル「TAIPEI101」の1階から89階までを39秒で移動する高速エレベータ。60.6km/hというスピードに対応するため,安全性や快適性を確保するさまざまな工夫が求められた。その一つが,エレベータの横揺れを抑える目的で開発した,ローラガイド装置だ。
 ローラガイド装置は,前後左右へカゴ室が揺れるのを防ぐため,カゴ枠の四隅に取り付けてある(図)。ローラガイド装置は三つのローラで構成し,それらが,断面形状が凸字形のガイドレールを挟み込むように接する。
 エレベータの昇降速度が速くなると,従来は問題とならなかったガイドレール表面の微小な凹凸やわずかな変位であっても,ローラガイド装置へ衝撃力を作用させる原因となる。そこで東芝エレベータは,ローラの回転軸,回転軸を取り付けたレバーの揺動軸,ばねの作用点の位置関係を見直したローラガイド装置を開発した。ガイドレールからの衝撃力を伝わりにくくするとともに,ばねで受ける力の割合を高くしている。
 新型のローラガイド装置では,レバーのほぼ中央部分を揺動軸で支持し,ローラの回転軸はレバーの一端に取り付けてある。ローラの回転軸とは逆の一端には,重りを付けてある。また,ばね力の作用点とローラの回転軸をほぼ一致させた。

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図●エレベータのカゴ室とローラガイド装置
昇降路内を上下に移動するカゴ室を案内するローラガイド装置が,カゴ枠の四隅に取り付けられている。ローラガイド装置は三つのローラで構成し,断面が凸形のガイドレールを挟み込むように接する。


小角度でオン/オフを切り替えられる
リフティング・マグネット
【カネテック】

円弧状の永久磁石をアンバランスに配置

 磁性体のワークをつり上げるリフティング・マグネットは,永久磁石の磁力によってワークを吸着する。吸着力のオン/オフを切り替える際には,装置外部のレバーを使って,内部に組み込んだ永久磁石の向きを変える。このため,レバーを動かすスペースが必要になる。
 そこでカネテック(本社長野県上田市)は,オン/オフの回転角度が60°と小さなリフティング・マグネット「LPR-A」シリーズを開発した(図)。吸着面の周囲に垂直な壁などがある場合でも,オン/オフを切り替えることが可能だ。
 リフティングマグネットでは,非磁性体でできたセパレータで区切った二つの磁性体の本体に永久磁石を組み込んである。永久磁石の向きを変えることで,ワークに磁力を流したり,流さなかったりできるわけだ。
 従来のLPF型では,円柱状と直方体の二つの磁石(フェライト磁石)を上下に配置し,磁性体の本体は左右に分かれている。円柱状の磁石を180°回転することで吸着力のオン/オフを切り替える。
 一方,新しく開発したLPR型では,かまぼこ形の磁性体の表面(曲面部分)に断面が円弧状の磁石(希土類磁石)を二つ,固定してある。本体を非磁性体で区切る位置は,回転中心の真下方向と,真下から反時計回りに60°回転した方向の2カ所。二つの永久磁石ごとかまぼこ状の磁性体を60°だけ回転させれば,吸着力のオン/オフが切り替わる。

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図●オン/オフの回転
角度が小さいリフティング・マグネット
オン/オフを切り替えるレバーの回転角度が60°で済むため,H型鋼の谷間や狭い部分に置かれたワークなどをつり上げやすい。