日経ものづくり 詳報

ビジネス化なるか,産総研のGridASP
日産自動車が導入を念頭に試験運用

安価な大規模シミュレーション環境を実現

 使いたいときに安く使える高性能コンピュータを―。こうした利用形態を目指して産業技術総合研究所(産総研)と民間企業が進めててきた「GridASPプロジェクト」が実証実験を終え,事業化の検討に入った。
 いまや製品開発に欠かせないシミュレーション。だが,衝突解析のように大規模な計算にはスーパーコンピュータなどが必要で,導入・維持に多大なコストが掛かる。そこで,計算に必要なコンピュータとアプリケーションを,ASP方式で提供しようというのがGridASPだ。
 導入を見据えた試験も始まった。日産自動車は,日本イーエスアイ(本社東京)やニイウス,プラットフォームコンピューティング(本社東京),産総研などと共同で,「PAM-CRASH」の遠隔での運用などを検証している。
 GridASPでは,ハード,ソフトに強い複数の事業者が協力してサービス提供する。ユーザーがアクセスするポータルサイトの運営や個別のカスタマイズを行う「サービス・プロバイダー(SP)」,ソフトを提供する「アプリケーション・プロバイダー(AP)」,コンピュータを提供する「リソース・プロバイダー(RP)」の3事業者だ。
 RPはグリッド・コンピューティング技術を用いたクラスタシステムを提供し,APはRPのコンピュータ上にアプリケーションをインストールしておく。ユーザーがSPの提供するポータルにデータとジョブを登録すると,それがRPのコンピュータに転送され,計算が済むと結果は再びSPを介してユーザーに返されるという流れだ(図)。

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図●「GridASP」の概要
エンドユーザーとの窓口となるサービス・プロバイダー, アプリケーションを提供するアプリケーション・プロバイダー,ハードウエアを保有するリソース・プロバイダーの3者が協力してGridASPサービスを提供する。それぞれが得意分野の強みを生かして,より専門性の高い対応が期待できる。データを転送する際は公開鍵暗号方式で暗号化するとともに,ユーザー名をジョブごとに匿名化するので秘匿性が高い。