日経ものづくり 詳報

並列2気筒エンジンに新バランス機構
BMW社,ピストンの真下で錘を上下

先行したヤマハ発動機との違いは「円弧」対「直線」

 独BMW社の2輪車部門は,排気量798mLのバイク「F800S」「同ST」を発表する(図)。並列(直列)2気筒エンジン向けに新たな振動軽減機構を持つのが特徴。錘を上下に運動させることで1次振動,2次振動を打ち消す。

往復運動には往復運動で
 4サイクルの並列2気筒エンジンは,等間隔に爆発させようとすれば両気筒の爆発間隔を360°に設定する必要がある。4サイクルは720°で一巡するから,両方のピストンピンは同じ位置になる。ピストン,コンロッドといった質量の大きな部品が2気筒分同じように往復運動するため,大きな1次振動が出る。普通は,その質量と釣り合わせるためにクランク軸に錘を取り付けて回す。これは「往復運動を回転運動で釣り合わせる」ため,上下方向以外の振動成分が残る。
 新機構は,釣り合わせる錘を上下に運動させ,ピストンが上下に動くことによる振動を打ち消す。クランク軸上,両方のピストンを動かすピンの中間に第三のピンを設ける。側面図で見ると4ベアリングの3気筒エンジンのようなクランク軸になる。ただし,3気筒エンジンのピンが120°間隔の3カ所にあるのに対して,新機構ではピストンにつながる二つのクランクピンが同じ位相にあり,中央のクランクピンはそれらと180°離れた反対側にある。中央のクランクピンから下に伸びたコンロッドに錘を取り付ける。

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図●独BMW社の「F800S」
エンジン下,オイルパンの部分に新機構があるのだが,特にオイルパンが深いようには見えない。