日経ものづくり ものづくりインタビュー

私が考えるものづくり

川村 誠
京セラ 代表取締役社長

全員が経営する伝統へ回帰
現場の実力を再強化したい

かわむら・まこと
1973年3月京セラ入社,1999年7月同社機械工具事業部長,2001年6月同社取締役,2002年8月同社機械工具統括事業部長,2003年6月同社執行役員常務,2005年6月代表取締役社長兼COO に就任,現在に至る。

さまざまな事業を抱える京セラを支えるのが, 柔軟性の高い小さな組織体を単位として経営判断を下していく「アメーバ経営」。 創業以来のこの手法への回帰を徹底することが,現場の力を高めて, ものづくりの面でも実力を向上させることになるのではないか。 毎月の改善は小さくても,半年,1年と積み上げれば創造的な結果につながる。

 「アメーバ経営」が京セラの根本になっている考え方ですが,ものづくりにおいてもこれが強みの源泉になっていると思います。アメーバ経営というのは,数人から50人程度の小さな組織を経営の単位として,月次で経費と収益を見るやり方です。組織はマーケットの変化に追従して,分裂したり大きくなったり,あるいは一緒になったり,自分の体を常に変えていくところから,アメーバと呼んでいます。
 ものづくりの面からアメーバ経営をみると,現場にいる全員が経営に参加するとともに,経営面からのものの見方が育っていくという特徴があります。小グループごとに毎月数字を細かく見て分析して,何が問題か,何をすべきかを明確にして,全員がそれを共有して活動していくわけです。開発,製造,営業,間接部門などあらゆる現場の全員が活性化することで,ものづくりの力も高まっていくと考えています。

月々の活動は小さくても,1年経つと大きい
 実際には,アメーバ経営の個々の組織の中で毎月の予定に対して実績が出たとき,予定通りいかないところもありますよね。例えば,これだけ造るつもりが足りなかったとか,これだけの時間で実行するつもりだったのに非常に時間が増えてしまったとか,あるいは逆に経費はこれだけ掛かるつもりが非常にうまくいって減ったとか,そういう月次の数字をいろいろ分析するんですよ。今回はこれを失敗したから別のやり方にしようとか,これはうまくいっているからもっと良くしようとか,課題が数字で明確になってきます。