「そろそろSi 材料の限界が見えてきた。材料をガラリと変えないと,今後対応し切れない」。この考えが自動車メーカーの技術者の間で共通認識になった。半導体の分野では長い間,Si 材料をできるだけ延命させてきた。しかし,この状況が変わりつつある。国内や米国で市場が拡大しているハイブリッド車のインバータ回路に使うトランジスタやショットキー・ダイオードの半導体材料として,Si では力不足の感が強まっているからだ。これを受け,ポストSi の座の争いが熱を帯びてきた。次世代パワー半導体の最有力候補のSiC,それを猛追するGaN,さらに酸化モリブデン(MoO3)という新材料も参戦した。

 今のところ,ハイブリッド車のインバータ回路には,トランジスタにSi 材料を使うIGBTを載せている。このIGBTは現在,最大175℃で動作させることを想定している。この温度ではリーク電流が大きく,「Siを使ったトランジスタは動作限界に近い」(ある半導体メーカーの技術担当役員)という状況である。次世代のハイブリッド車では200℃動作を視野に入れており,Si 材料ではもはや対応できないとの見方が強い。