日経ものづくり 設計者のための解析入門

第4回 固有値解析の境界条件

欠かせない振動モードの把握
周波数を左右する拘束条件

騒音や破壊などの原因となる共振問題を解決するために,重要な役割を果たすのが固有値解析だ。固有値解析では,設計構造物の固有周波数だけでなく,振動モード(変形状態)の把握も欠かせない。固有値解析を実施する場合の基本的な留意点について解説してもらう。(本誌)

西浦光一
積水化学工業 環境・ライフラインカンパニー京都研究所 ESSプロジェクト

 前回は強度解析における境界条件(拘束条件)の使い分けについて解説した。今回は,強度解析と比べて遜色ないほど重要な固有値解析を取り上げる。
 固有値解析とは振動解析の一つで,設計構造物の固有周波数を求める解析だ。主に,機械破壊の共振問題を解決する手段として用いる。以下,平板の固有値解析を例に,境界条件およびメッシュ分割の特徴について触れながら,共振問題を解決するポイントについて解説する。

振動特性の把握に拘束は不要
 共振問題を解決するためにはまず,設計構造物の振動特性を調べる必要がある。固有周波数で共振した場合に,どのような振動モード(変形状態)が表れるかは,設計構造物の形状によって決まる。
 このため,モーダル実験ではフリーフリーの加振実験によって振動特性を調べる。フリーフリーとは,設計構造物をできるだけ拘束を受けないような状態に置いて実験することだ。  これに相当することを固有値解析で再現するには,実験と同じ状況を境界条件として設定すればよい。拘束条件に関しては,何も設定する必要がないことになる。

日経ものづくり
図●フリーフリーの固有値解析の結果
低次の周波数から1次曲げ,1次ねじり,2次ねじり,2次曲げという順番にそれぞれの振動モードが発現する。