日経ものづくり 材料力学マンダラ

第16巻
鉄筋の数はこう決める

広島大学大学院教授 沢 俊行


●耐震強度偽装問題の鉄筋コンクリートは積層梁でモデル化
●曲げモーメントが作用したときの引っ張りは鉄筋が受け持つ
●引っ張り側と圧縮側で強度のバランスを取る設計が経済的


 今回は,昨年来の耐震偽装問題で話題になった鉄筋コンクリートに曲げモーメントが作用するケースを考えます。実は,この問題は前回の積層梁の応用編になります。そこでまず,復習問題を一つ解いてから本題に入りましょう。
 図(a)は,上から厚さ20mmの鋳鉄板,同300mmの木材,同10mmの鋼板から成る積層梁。ここに曲げモーメントが下に凸になるように作用しています。鋼板の最大引っ張り応力が100MPaに達するとき,鋳鉄板に生じる最大の圧縮応力を求めてください。なお,積層梁の断面の幅は200mm,縦弾性係数は鋳鉄がEc=100GPa,木材がEw=10GPa,鋼板がEs≒200GPaとします。

日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●鋳鉄板―木材―鋼板の積層鋼板
(a)断面。(b)変換断面。鋼板を基準にした。