日経ものづくり タグチメソッド

新シリーズ
商品企画七つ道具

第一回 「何を作るべきか」の方法論
企画のやり方がヒットを左右
システマチックに顧客と共創

神田 範明
成城大学 経済学部経営学科教授

ヒット商品が出ない―。こう嘆く企業や技術者は少なくない。そうした企業や技術者にしばしば見られるのが「作れちゃう病」。何となくやっているうちに商品ができてしまう。しかし,それではヒットは期待しにくい。今号から4回にわたり,ヒット商品を生み出すための方法論「商品企画七つ道具」について解説してもらう。(本誌)

 ヒット商品を連発する企業がある一方で,なかなかヒット商品を出せない企業が少なくない。では,なぜ,多くの企業ではヒット商品を出せないのか*1。その最大の原因は何か―。
 企業のトップは「やる気がない」とか「いい人材がいない」とか言うかもしれない。しかし,そんなはずはない。どんな企業でも社員は頑張っている。たくさん情報を集め,一生懸命検討している。他社よりもやる気がないなどあり得ない。人材が劣っているとも考えられない。
 では,トップの責任か。小さな企業ならそれもあり得るが,大きな企業となると,企画・開発などのスタッフの責任である。トップの経営方針や戦略で確かに組織が変わり,雰囲気や環境も変化する。しかし,それですぐにヒット商品に結び付くということにはならない。
 さて,では正解は何か。答えは実に簡単である。商品企画のやり方が悪いからだ。すべてはやり方の問題,しかも,手法そのものと,手法のつながりの二つが共に悪い。決して人や組織の問題,経営方針の問題ではない。
 それが証拠に,本連載で述べる方法を活用して成功した企業は規模/業種/組織/商品などにあまり共通性がなく,実にさまざまである。ただ,次のような意味で似た悩みを抱えていた。読者の皆さんの企業が以下のいずれかに該当するのであれば,逆に,本連載の方法でヒントを得て,大ブレークに向かえる可能性がある。