日経ものづくり 特報

ロボットが働くセル生産

千手観音のごとく多数の手で組み立てを効率化



中国をはじめとする諸外国にも負けずに,日本で未来永劫ものづくりを続けていきたい。そんな願いを込めてIDECが開発したのが「アセンブルショップ」。これまでは人間が中心だったセル生産にロボットを投入。柔軟性の高さはこれまでのセル生産と同等を維持。さらにロボットハンドに,千手観音さながら複数の役割を持たせることで,高い生産性を実現した。アセンブルショップの詳細とともに,それが生まれた背景を探る。

 兵庫県加東郡に位置するIDECの滝野事業所。その2階には,ロボットが整然と並んだ組み立てラインがある(図)。もちろん,ロボットを活用しているのだから組み立ては自動化されている。作業員はほとんどいない。
 特徴的なのは,自動車の組み立てラインなどとは違って,長く連続したラインではないこと。水平多関節型ロボットと垂直多関節型ロボットの2台のロボットを中心とした「組み立てセル」が構成されており,その組み立てセルが複数並んでいる。
 このロボットを活用したセル生産システムを,IDECでは「アセンブルショップ」と名付けている。人手を活用したセル生産と同様に,アセンブルショップでも押しボタンスイッチやリレーなどの製品を,一つのセル上で完成させる。20個以上の部品から成る製品を,組み立てるセルもある。
 初代のアセンブルショップが稼働したのは2000年。その後,その数をどんどん増やし,現時点で組み立てに利用しているのは16セル。さらにこの数を,どんどん増やしている。

日経ものづくり 特報
図●ロボットがセル生産を行う「アセンブルショップ」
複数のロボットが協調しながら製品を組み立てる(a)。現在,16の同ショップが稼働している(b)。