日経オートモーティブ 連載

仕事に役立つローカル技術用語集・日産自動車、ホンダ編

自動車メーカーの
現場を理解する

前回のトヨタ自動車に続き、今号は前半で日産自動車、後半でホンダの専門用語を解説する。日産自動車は「日産生産方式」など生産に関するものを中心に、ホンダは「ワイガヤ」「文鎮組織」などホンダならではの思想や理念を表す用語を選んだ。

日産自動車 生産事業本部 NPW推進部
同期生産・サプライヤ支援グループ
武尾裕司
東京大学ものづくり経営研究センター COE特任研究員
伊藤 洋


日産自動車編

NPW
 Nissan Production Way(日産生産方式)の略。「限りないユーザーへの同期」がコンセプト。これに基づく高い目標を達成するために、モノづくり(生産のシステム)を改善・改革していく考え方や取り組み方の総称。
 ここでいう「ユーザーへの同期」とは、期間短縮やタイミングを合わせるなどの「時間に関する同期(T:Time)」だけでなく、ユーザーが求める品質を造り込む「品質の同期(Q:Quality)」や、ユーザーから対価を得られないムダを徹底排除し付加価値だけを提供する「コストの同期(C:Cost)」を含む。

同期生産
 NPWが具体的に目指している生産システムの姿を同期生産と呼んでいる。同期という言葉は、当社で1960年代に行われた「同期化実験」に端を発している。
 その後、同期生産という言葉が正式に使われ出したのは、1997年の「同期生産導入宣言」である。当時の生産部門担当副社長であった南光成氏が同期生産をグローバルに展開した。
 日産における「同期生産」は、顧客の注文を受けてから生産する、いわゆる受注生産を指しており、車両も部品も在庫を極力持たないことを基本的な考え方としている。

ホンダ編

人間尊重
 ホンダは人間の持つ本来の特性(自由、創意、知恵、努力、意欲など)を伸ばし、共通の目的に向かってそれぞれが持てる特性を発揮し役割を果たすことを期待する。企業のいかなる成果もこうした一人ひとりの努力の結果である。このような観点からホンダは次の三つを人間尊重の柱にしている。

自立:既成概念にとらわれず自由に発想し自らの信念に基づいて主体性を持って行動し、その結果について責任を持つこと。

平等:お互いに個人の違いを認め合い尊重すること。意欲のある人には個人の属性に関係なく、等しく機会が与えられること。

信頼:一人ひとりがお互いを認め合い、足らざるところを補い合い、誠意を尽くして自らの役割を果たすこと。 すなわちホンダで働く一人ひとりや企業が自立した個人あるいは企業として平等の関係に立ち、お互いを信頼し各自が持てる力を尽くすことがホンダの考える人間尊重である。