チップ間のデータ転送速度がついに1Tビット/秒に達した。パラレル・インタフェースやシリアル・インタフェースなどの既存の有線通信技術に高速化の限界が叫ばれる中,チップ間を無線で通信するという斬新な手法を取り入れることで実現した。チップ上に1024個のコイルを形成し,上下のコイル間で発生する磁界結合を利用してデータを伝送する。積み重ねた3個以上のチップ間で通信が可能という特徴を持つ。この技術をマイクロプロセサと大容量メモリの間の通信などに利用することで,機器の性能を飛躍的に高められる可能性がある。消費電力低減や回路面積の縮小にも有効であるため,携帯機器やデジタル民生機器への搭載も期待できる。「現在の目標は1Pビット/秒の実現」と豪語する開発者自らが,現在の研究開発状況と今後の技術の方向性を解説する。(大石 基之=本誌)

黒田 忠広
慶応義塾大学 理工学部 教授