日経ものづくり タグチメソッド

タグチメソッド

最終回 パラメータ設計以外の技法
損得を理論化し許容差決める
品質管理コストの最適化にも効果

立林 和夫
富士ゼロックス 開発管理本部 開発管理部 品質工学チーム長

これまでは,パラメータ設計を中心にタグチメソッドについて解説してもらった。最終回の今回は,タグチメソッドに含まれるそれ以外の技法について紹介してもらう。タグチメソッドには,設計パラメータの許容差を合理的な根拠に基づいて決定したり,品質管理コストを最適化したりする技法なども含まれている。(本誌)

 これまでパラメータ設計について紹介してきたが,タグチメソッドにはそれ以外にもさまざまな技法がある。最終回となる今回は,その中から代表的な技法を幾つか紹介する。

許容差の影響度を評価する
 タグチメソッドを用いた開発では,技術者はまず,パラメータ設計により設計パラメータの値を決定する。そして,次に必要とされる仕事が,部材グレードや許容差の決定である。
 現状では,合理的な根拠というよりも,設計技術者と生産技術者の力関係からそれらを決めていることが多い。しかし本来は,出力への影響が大きな部材から順に,コストを考慮しながら,部材にはより高級なグレードのものを,許容差にはより厳しい値を割り振っていかなければならない。タグチメソッドは,そのための合理的な技法を提供している。
 ここでは,本連載の第1回で紹介した電源回路を例に,同技法の概要を紹介しよう(図)。この電源回路の場合,出力と各素子の定数の間に理論式がある。各素子の定数のばらつきが,同回路の出力のばらつきにどの程度影響を与えるかを簡単な計算で求められる。このため,許容差決定のプロセスが理解しやすいと考えられる。

日経ものづくり 特報
図●簡単な電源回路とその出力電圧の算出式