日経ものづくり アイデアコーナー

スクラップ除去装置 【松本工業】

金型の上下運動を水平運動に変換

 金属プレス加工の際に生じるスクラップ(抜きかす)を,金型の下から自動的に排出する装置。ブランク材を上下から金型でプレスすると,製品の余白部が打ち抜かれてスクラップが発生する。それが金型内に残っていると,ブランク材と一緒にプレスされて打痕と呼ばれる欠陥の原因となる。
 通常は,下金型のすき間からスクラップが落下するようになっている。ところが,金型の下にスクラップがたまってくると,うまく金型から排出されなくなる。
 そのため,人手でかき出したり,コンプレッサで圧力を高めたエアを吹き付けてスクラップを吹き飛ばしたり(エアブロー)して除去している。ただし,その都度加工をとめなくてはならない上,作業に時間がかかる。エアブローの場合は,配管を接続したり調整したりといった段取りの時間も必要となる。
 本装置は,プレス加工の際の金型の上下動を利用することで,特別な動力源を用意することなくスクラップを排出する。かすを除去するために加工をとめる必要もない。
 装置は,主に上ユニット,下ユニット,シュートの3部品で構成する。上金型にはくの字形をした上ユニットを,下金型には下ユニットを設置する。下ユニットにはブラケットを介してシュートを取り付ける。シュートは金型の下にあるゲタと呼ばれる高さ調整用の部材の間に配置し,落ちてきたスクラップを受け止める(図)。

日経ものづくり アイデアコーナー1
図●プレスのスクラップ排出装置
上金型に上ユニットを,下金型に下ユニットを取り付けてある。下ユニットには,金型から落ちてきたスクラップを受けるシュートを取り付けている。


先入れ先出し装置 【アイシン・エィ・ダブリュ】

シュートの軽/重でストッパを上下

 製造/組み立てラインにおいて,前工程から送られてきたシュート上の部品を,早くシュートに投入されたものから優先的に取り出すための装置。
 省スペース化を図るため複数のシュートを横に並べて設置していると,取り出しルールを決めておいても作業者は,つい目に付いた取り出しやすいシュートから適当に使ってしまうことが多い。その結果,どのシュートの部品が先に投入されたものか作業者には分からなくなる。
 このため先にシュートに入っていた部品がなかなか次工程に投入されずにホコリをかぶったり,さびが生じたりして品質不良の原因となることがある。
 本装置は,複数並んだシュートの前面(間口)に,間口の数よりも一つだけ少ない数の移動式の扉を設けたもの。部品を取り出すべきでないシュートの前には扉を置いて,間口を一つだけ開放しておくことで,優先的に部品を取り出すべきシュートを作業者に明確に分かるようにする。これによって,先入れ先出しが実現できる。シュート上で部品が長時間滞留するのを防げる上,取り出す間口の指示に電気などのエネルギが要らない。
 四つのシュートが並んだ場合を例に説明する(図)。一番左の間口1から部品を取り出し,シュートが空になったら間口2,3,4と順番に使っていき,間口4の部品を使い終わったら再び間口1の部品を使うものとする。
 最初の時点で,間口2~4を3枚の扉がふさいでおり,作業者は間口1からしか部品を取り出せない。間口1の部品を使い終わったら,扉を一つ左に移動させて間口2の部品を使う。これを間口3,4でも繰り返し,間口4が空になったら再び間口1に戻る。

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図●4列シュートの先入れ先出し装置
一番左の間口1のシュート内にある部品から取り出す(a)。間口1の部品がなくなったら,作業者は間口2の扉を間口1の前に移動し,間口2のシュートにおいてある部品を取り出す(b)。同様に,間口3,間口4の部品を取り出していく(c)。間口4の部品がなくなったら,3枚の扉をまとめて移動させ,再び間口1から部品を取り出す。