日経ものづくり 直言

1週間に3回会え
名刺は何回でも出せ

政策研究大学院大学 教授
橋本 久義氏 


 私の尊敬する通商産業省(当時)の先輩が教えてくれたことの一つに「『これは』と思う人物に出会ったら,1週間に3回会う努力をしろ」ということがある。6カ月も,1年も間を空けたら,5回会っても10回会っても相手は覚えてくれない(印象が強ければ別だが・・・)。
 しかし,1週間に3回会えば,相手はいやでも覚えてくれる。もっとも「会う」といっても物理的に会うことばかりでなく,手紙を書く,電話をする,ちょっとしたことを頼む・・・まあ,いろいろある。最初と最後は顔を見せないと効果は薄いから,手紙や電話で代替できるのは一回だけということになるのだが。
 私の知り合いには,「これは」という人物に出会うと,自動的に忘れ物をする習性を持っている人がいる。本人は「いや,つい緊張して・・・」と言うのだが,私には習性になっているとしか思えなかった。訪問先に何かしら忘れて,数日のうちに高価なお土産を持って訪問し,丁寧にお礼を言って,引き取ってくる。運が良ければ相手に会えるし,最低でも先方では何回か話題になるはずだ。
 私の場合は工場訪問の約束を取り付けることが多かった。工場を訪問してじっくり話を聞けば,相当親しくなれるものだ。

日経ものづくり 直言
政策研究大学院大学 教授
橋本 久義

1969年東京大学工学部精密機械工学科卒業,同年通産省入省。1994年埼玉大学教授,1997年から政策研究大学院大学教授。