日経ものづくり ものづくりインタビュー

私が考えるものづくり

上野 保氏
東成エレクトロビーム 代表取締役社長

中小企業の役割は
基盤技術のノウハウ提供

うえの・たもつ  
1962年富士自動車入社,1971年同社電子ビーム事業部長,1977年東成エレクトロビーム設立,1979年同社代表取締役社長に就任,現在に至る。早稲田大学ナノテクノロジー研究所客員教授,長岡科学技術大学客員教授として教壇に立つ傍ら内閣府・総合科学技術会議ものづくり技術分野推進戦略プロジェクトチーム委員,経済産業省「産業構造審議会」新成長政策部会委員,同省中小企業庁「中小企業政策審議会」委員,東京都「東京都中小企業振興対策審議会」委員(いずれも現職)など政府・地方自治体のさまざまな委員に就任。

政府の委員を多数務めるなど,
今や中小企業の代表と見られることが多い。
その背景にあるのが,ビジネスモデルの確かさ。
電子ビームやレーザを用いた溶接の
最新技術を導入して使いこなし,
そのノウハウを顧客に提供する。
高度成長時代以後,
大手が失った能力を補完するところに,
中小企業の役割があると見る。

 日本には燃料電池,情報家電,ロボットといった得意分野がありますが,これらは鋳造,鍛造,金型,溶接,めっき,機械加工といった基盤技術があって初めて成立するものです。そして,基盤技術を支えているのは多くが中小企業ではないでしょうか。

生産技術部門の役割が中小企業に
 昭和30年代から50年代まで,日本の高度成長時代は,ものづくりの組織や形態がものすごく日本的なものでした。その象徴的なものが,生産技術部門の在り方だったと思います。
 設計部門が最初の図面を描いた後で,いったん生産技術部門に渡していました。生産技術部門は,例えば従来より大型の新製品を造ろうとしたとき,今持っている機械では造れないことが分かったら,新しい機械をあらかじめ手配しておくとか,あるいは治具の設計をどうするのかとか,事前に検討していたんですね。その上で図面をまた設計へ戻していた。だから,完全なものづくりのできる設計案が製造や資材購買の部門に下りてきていたわけです。