第1部<インパクト>
周波数も帯域も自由自在
世界共通端末の時代へ

 W-CDMA,GSM,無線LAN,ETC,デジタル・テレビ放送,WiMAX――携帯機器や自動車など移動体に向けた無線サービスは,続々と増える。サービス対象となる携帯機器や自動車の無線送受信回路は,まさに膨張する一方だ。もしも,こうした多数の放送/通信サービスを,たった1つの無線チップで受けることができたら…もしも,将来のサービスにも対応できるように,ソフトウエアでアップグレードできたなら…そんな夢のような話を現実にする,新世代の無線アーキテクチャが台頭し始めた。いわゆる「リコンフィギュラブルRFチップ」である。

第2部<実現手法>
再構成可能なRFチップ
次世代品が続々登場へ

 送受信するバンドの中心周波数や帯域幅を動的に切り替えられるRFチップの試作や開発の発表が相次いでいる。実現手法は大きく2つに分かれる。RF信号を直接サンプリングすることで周波数を一気にベースバンド付近に変換するものと各種アナログ部品の周波数特性を可変にするものである。このほか,広帯域型や多経路型の開発も進む。まさに百花繚乱の状態で,知恵比べが本格化している。

第3部<応用>
動き出すコグニティブ無線
時間・周波数・空間を融通

 無線システムの高度化への一里塚として「コグニティブ無線」に関心が集まり始めた。端末や基地局などの無線機に周辺の電波環境を認識・認知する機能を持たせ電波環境に応じて周波数や方式などを選択し,周波数利用効率を高める。欧米などで研究開発が活発化し始めたのに加えて,国内でも総務省が研究開発の促進策を打ち出した。時間と周波数,空間を複数の無線通信システムが適応的に利用するコグニティブ無線はリコンフィギュラブル無線が実現技術の大きな柱になる可能性がある。