日経ものづくり 詳報

静電チャックの吸着力を20倍向上
TOTO,加熱しない新成膜技術を応用

搬送速度も向上できるし,機械式チャックの代替も狙える

 TOTOは,吸着力を従来比で20倍高めた静電チャックを開発,2005年12月に開催された「セミコン・ジャパン2005」に参考出品した(図1)。静電チャックは文字通り,静電気の力を利用して半導体ウエハーやFPD(フラット・パネル・ディスプレイ)用ガラスなどを吸着し,搬送や固定に使う部品。その吸着力が高まったことにより,適用対象が拡大したり生産効率が向上したりすると期待される。
 図2は,吸着しにくいとされる石英ガラスを用い,各種静電チャックの吸着力を常温で比較したもの。通常の静電チャックは全くといっていいほど吸着しない。これに対し同社が現在販売中の静電チャック「G-ESC」は,印加電圧次第では対応できそうだ。しかし「印加電圧が高くなると,特殊な電源が必要になるため嫌われる。目安は700V。現実には500V程度が好まれる」(同社精機事業推進部長の粕川敦彦氏)。G-ESCが石英ガラスの搬送に本格的に利用されていないのは,このためだ。
 一方,新しい静電チャックは,印加電圧が500Vで約2gf/cm2,700Vで約6gf/cm2と,石英ガラスの搬送や固定に十分な吸着力を発揮する。石英ガラスの場合は現在,ツメでチャックする方法が主流。それに取って代われば,高い平面精度が実現できる。
 それだけではない。生産効率も高まる。通常,静電チャックは被吸着物の全面に敷き詰めて使うが,吸着力が向上すれば,その必要がなくなり,利用する静電チャックの数を減らせる。逆に,数を減らさなければ,搬送速度を高められる。

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図1●新しい静電チャック
直径は6インチ。通常,被吸着物の全面に敷き詰めて使うが,吸着力を高めたため使用数を減らしたり,使用数を減らさずに搬送速度を向上したりすることが可能になる。

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図2●吸着力の比較
被吸着物は,吸着しにくい石英ガラス。通常の静電チャック,TOTOが現在販売中の静電チャック「G-ESC」と比較し,新しい静電チャックの吸着力は飛躍的に向上している。