日経ものづくり 開発の鉄人

第20回 ねじって,ねじを造る

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦

細長い鋼板をねじって造る商品がある。
もともとはくいとして使うためのものだ。
土を押しのける量を最小限に抑えながら,
土に対する圧縮,引っ張りとも,大きな荷重に耐えられる。
最近は,用途が土木から,ほかの用途に広がり始めた。
転造や,切削で造るねじの市場を狙う。


 鋼板をねじってねじ,いや,ねじのようなものを作る工法がある(図)。もともとは,くいのような土木,建設の用途が多いんだけどね。送りねじのような「ものづくり」ど真ん中にも進出してきそうだ。

言うはやすく,行うは難し
 GT・スパイラルという会社が熊本にある。社長が後藤常郎さんだから頭文字でGT。分かりやすくていいネーミングだよね。で,スパイラルの方は「らせん」。ねじって造るねじのメーカーだ。
 造り方は簡単だ。言うだけならね。鋼板の両端をクランプして,ねじるだけだ。以上終わり。
 でも,実際にやるのは簡単ではない。シロウトがまねすると大変なことになる。普通は,ここまでねじろうとすると応力がどこかに集中してワークが裂けるだろうね。両端をねじるんだから,クランプから離れた中央部ではねじる力が均等だ。でもワークの肉厚に分布があったり,表面に傷があったりすると,てきめんに弱い所だけ変形が進行しちゃうだろう。
 両端はもっと大変だ。クランプするわけだから,力は均等にはならない。クランプする場所のそばでは,ねじる力だけでなく,いろいろな力が3次元的にややこしく分布する。
 応力集中させないためのクランプの仕方に秘密があってね。GT・スパイラルはこの辺を工夫した製造機械で特許を取った。

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図●GT・スパイラルの製品
大小さまざまならせんがある。