日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南

新シリーズ
第1回
日本では手に入らない部品も
中国なら小ロットで購入できる

日本における部品選定が大きく変化している。日本の部品メーカーの多くが価格競争に巻き込まれてラインアップを削減。安いわりに受注の少ない部品の生産を打ち切った。その結果,低価格で小ロットの部品の入手が困難になっている。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 2002年の初夏,サッカーのワールドカップの開催で沸き立つ日本に,私はそれまで赴任していた中国から帰ってきました。中国ではある日系メーカーの現地工場で製造部長を務めていましたが,もう一度,日本で開発の仕事に携わりたいと思ったのです。
 製造業では,日本から中国へ行く人はどんどん増えています。そうした中,中国から日本へと戻ってくるのは,まるで時代に逆行しているかのように見られました。現に,私が帰国した際に「今,日本の製造業の目は完全に中国に向いているといってもいいくらいだ。みんなが中国への進出に躍起になっている最中なのに,なんで君は日本へ帰ってくるんだ?」と私に真顔で尋ねる友人がいたほどです。
 思えば,私が中国に赴任することになったのは,今から10年以上前にさかのぼる1994年の夏のこと。その直前に友人たちが開いてくれた送別会で,彼らは口をそろえてこう言ったのを私は覚えています。「どうして中国に行くんだよ。今,君は日本の大手企業の一員として十二分に安定した生活を送っているじゃないか。そんな生活をわざわざ捨ててまで中国に行くなんて,おれには理解できないよ」。

10年もたたずに浦島太郎
 それからわずか8年ほどで,友人の言葉が正反対になっているのです。この短い期間で日本の製造業はそれほどガラリと変わったということです。中国から帰国した私は,まさに「浦島太郎」になったかのような気分でした。
 その気分を最も味わったのは,開発環境が激変していたことでした。私が中国へ出発する前は,開発部門には設計用のドラフターがたくさん並んでいました。当時はCADという言葉が会社で頻繁に出てくるようになり,先輩の技術者たちがCAD製品説明会や講習会などに出掛けて,資料をたくさん抱えて帰ってきていた時代でした。 日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南