日経オートモーティブ 連載

仕事に役立つローカル技術用語集・トヨタ自動車編

専門用語が分かれば
「カイゼン」が分かる

トヨタの「カイゼン」、ホンダの「ワイガヤ」など、メーカー独自の用語には、その会社のクルマ作りに対する姿勢が凝縮されている。そうした用語を知ることは仕事に役立つだけでなく、その会社の強さを知る手掛かりにもなるだろう。本号から2回連載で、主要完成車メーカーの独自用語を解説してもらう。(本誌)

柴田 誠


トヨタのDNA

sジャスト・イン・タイム
(JIT:Just in Time)

 トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎氏の発案とされ、“必要なもの”を“必要なとき”に“必要なだけ”手に入れれば、生産現場のムラ・ムリ・ムダがなくなり、生産効率が上がるという考え方に基づいた、トヨタ生産方式の二つの柱のうちの一つ。標準生産を前提として、「後工程引き取り」「工程の流れ化」「必要数でタクトを決める」の三つを基本原則とする(図)。
 流れ作業の中で余分なものを持たない、余分なものを作らない、ことを基本とした生産・運搬の仕組みであり、これを実現する手段として、情報伝達と生産指示書の役割を果たす「かんばん」がある。また、流れる作業を実現するためには生産ができる限り平準化されている必要があり、仕事の「標準作業」が決められていることが前提になる。

s自働化(Jidoka)
 トヨタ生産方式の基本思想を、ジャスト・イン・タイムと共に支える2本柱の一つ。トヨタ元副社長で「かんばん方式」の生みの親とされる大野耐一氏の造語。「自動化」とはせずに、あえて「自働化」(にんべんの付いた自働化)と記す。その意味は、単純な機械化(自動化)ではなく、「人間の知恵を付与することで、不良品を生産しない」ということ。
 トヨタの前身である豊田自動織機では、織機の縦糸や横糸が切れたりなくなったりしたとき、機械が自動的に止まる仕組みになっていた。つまり、機械に不具合を判断させる装置が組み込まれていたわけで、ここから発想されたものである。

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図●トヨタ生産方式の2本の柱