日経オートモーティブ この会社・この技術

ミロクテクノウッド
高級車の部品作りに 生きる
匠の木工技術

かつては、ウッド調、木目調として本物に似せた内装が高級感の演出に一役買っていたが、最近は“本物の”木製ステアリングやシフトノブが多用されている。ところが、相手は天然素材。高度な技能がないと、工業製品として利用することはできない。銃床の木工技術を生かして、トヨタの「レクサス」などに部品を提供しているのが高知県のミロクテクノウッドだ。

 高級車市場の成長によって、エレクトロニクスの多用とともに、重視されるようになってきたのが、“匠の技”を生かした高級感のある内装部品だ。木製のステアリングやインストルメントパネルの化粧版など、プレミアム性を表現するため本物の素材を使い、高度な技能により仕上げられる。
 元々、日本の自動車産業において、天然素材を使った部分はそう多くはなかった。日本車の自動車カタログを見ると、「ウッド調」「木目調」という表現が目に付くことからも分かるだろう。天然素材を使って、難燃性や耐久性の要求品質を満たすことは容易ではない。さらに、均一ではない天然素材を使って、高級車の厳しい品質基準を満足させるのも至難の業だ。

銃床で木工技術磨く
 そんな中で、トヨタ自動車の高級車向け木製ステアリングホイールやシフトノブを製造するのが、1999年に創業したミロクテクノウッドだ。ミロクテクノウッドは、猟銃メーカー大手のミロク製作所をはじめとするミロクグループのグループ企業である。
 ミロクグループのコアビジネスである猟銃の主な市場は米国だ。銃メーカー大手の米Browning社にOEM(相手先ブランドによる生産)供給しており、上下二段銃では40%ものシェアを誇る。
 「銃の製造技術は大変繊細です。暴発などを防ぐための安全性は言うまでもありませんが、実用性、芸術性の両面から高い精度が要求されます。金属同士の合わせ目はすき間なく組まないと使ううちにガタがでますし、木製の銃床と金属製の銃身といった異なる素材の部品をぴったりと合わせる必要があります。さらに手が触れる部分は、機械では削れない微妙な曲線が望まれます」と、ミロクテクノウッドの田中勝久社長は語る。実際に作業を見ると、銃身と、銃身の後端で衝撃を受け止めるレシーバー部分のすき間はμm単位で補正をしながら組んでいく。

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図●木製ステアリングの製造工程
(a)金属製の心材を木材でくるみ、手作業でやすりをかける。(b)完成品の検査工程。