日経オートモーティブ Key Person

日経オートモーティブ Key Person

BMWグループ デザイン・ディレクター

Christopher Edward Bangle氏

1981年米国カリフォルニア州パサディナのデザイン・アート・センター・カレッジ卒業。同年ドイツOpel社のデザイン・スタジオにインテリア・デザイナーとして入社。1985年イタリアFiat社スタイリング・センター入社。1992年1~9月同センターのデザイン部門ディレクター。1992年ドイツBMW社開発部門デザイン部長に就任。2003年より現職。


 それまで機能的なイメージの強かったBMW車のデザインを、よりエモーショナルで躍動的に変貌させた立役者ともいうべき人物がChristopher Edward Bangle氏。しかし、同氏によれば、BMWデザインの「哲学」は不変だという。クルマのインテリアは、運転のための機能を優先すべきだと主張し、最近、装飾的なデザインが目立つ日本車のインテリアを疑問視する。(聞き手は鶴原吉郎)

――BMW社はインテリアに特化したR&D組織を設けたと聞いています。他社では、インテリアの各要素を個別に開発している場合が多いと思いますが。
 ユーザーが関心を持っているのは、インテリアの機能全体がもたらす「トータルエクスペリエンス」であって、個々の部品ではありません。ユーザーがパワートレーンの性能には興味を持っても、エキゾーストパイプやバッテリに関心があるわけではないのと同じです。我々BMW社は、ユーザーがどう考えるかという視点に基づいて組織を構成します。インテリアに関して言えば、エルゴノミクス、エンターテインメントシステム、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)、インストルメントパネルなど多様な観点からの検討が必要です。今回の組織改正は、こうしたユーザーからの視点を徹底するためのものです。

インテリアは「ワークスペース」
――最近のBMW社で、インテリアに対する考え方に変化はありますか。
 インテリアの「哲学」には何ら変更ありません。目指すものが「駆け抜ける喜び」であることに変わりはないからです。インテリアは、運転のためのワークスペースであるということを最優先させています。同時に、後席の乗員も楽しく過ごせること、これが我々のインテリアに対する哲学です。
 一方で、どんな世代のクルマにも、それぞれの時代ならではの挑戦があります。例えば、我々が何年か前に採用したHMIの「iDrive」がそうです。これは、ドライバーが視線を移動させずに、さまざまな機能を操作できる最も効果的な手法として開発しました。業界内の新しい試みとして、その後多くの自動車メーカーが、独自の改良を盛り込みながら採用しました。哲学は不変でも、それを実現する手段は日々進化しているのです。