日経ものづくり 事故は語る

加速試験の在り方に一石投じた
ソニー製CCDの不具合

ソニーが,自社製CCDの不具合を,2005年10月3日に公開した。 経年変化と腐食性の気体によって,CCDのワイヤ配線が破断する。 製造工程と部材の変更により,品質にバラつきが発生していたが, 耐久品質を検査する加速試験でも,気付くことができなかった。

 不具合の発生確率が通常よりも高いとしてソニーが挙げたのは,デジタル・スチル・カメラ(DSC),デジタル・ビデオ・カメラ(DVC),携帯情報端末(PDA)などの一部機種。いずれも同社製CCDを搭載する製品だ(図)。このCCDに不具合が生じた。液晶パネルに表示する映像や,記録する静止画・動画に異常が出る。ただし,不具合が生じる前に記録した静止画・動画に関しては,液晶パネルで正しく再生できる。
 それから間もなくして,ソニー以外のメーカーが相次いでDSCやDVCの不具合を発表する。すべてCCDを搭載している機種で,不具合の内容も同社と全く同じだった。
 同社はDSCやDVC向けCCDの最大手メーカーであり,外販先の企業名は明らかにしないが,CCDを外販していること自体は認めている。今回の発表の時期から考えても,各メーカーの製品に使われているCCDのほとんどは,同社製と見られる。対象となる台数は,ソニーだけで約300万台,全メーカーを含めると1000万台を超える。
 こうした事態に対して,ソニーは無償修理に応じる期間の延長を決めた。実際に不具合が生じた製品に限り,本来の製品保証期間ではなく,各製品の補修用性能部品の保有期間まで無償修理を受け付ける。CCD外販先企業で発生する製品の回収・補修費用の分担に関しては「少なくともCCDの実費は当社が負担することになる」(同社)。
 今回,ソニーが不具合の公開や無償修理期間の延長といった措置を取った理由は,不具合の発生確率が同社の「基準値」を上回ったからである。発売からしばらくたち,不具合の報告が徐々に増えてきたこともあり,この時期の発表となった。基準値そのものを同社は明らかにしていないが,不具合の発生確率は1%前後のオーダーとみられる。

日経ものづくり
図●ソニー製のCCDと,デジタル・スチル・カメラ
(a)はCCDの外観イメージ,(b)は不具合の発生確率が高い機種「DSC-U10」。