日経ものづくり 特報

求む,巨大燃料電池

石炭からエネルギを60%引き出せる



福岡県北九州市若松区。 筑豊炭田の積み出し港として栄えた街の外れで, 高さ60mという巨大な設備が運転を続けている。 石炭からガスを作る施設「EAGLE」。 できたガスを送り込む燃料電池さえあれば, 石炭が持つエネルギの60%を電気に変換できる。

 携帯機器など「軽薄短小」に話題が集まりがちな燃料電池。普及に向けた次の段階として,堂々たる重厚長大の用途が出番を待つ。石炭火力発電所の効率を高めるツールとしての燃料電池だ。その周辺を固める技術の開発が大詰めを迎えた。
 J-POWER(電源開発)は,石炭からガスを作り,燃料電池に供給する要素技術として「EAGLE」を開発してきた。1995年度に着手し,2006年度には終了する予定だ。終了が迫った現在,急速に成果がまとまりつつある。累計では3466時間運転し,852時間という連続運転時間を達成した。

石炭を無駄なく使うために
 開発の動機は,石炭を効率良く利用することだ。石炭は主役の地位を石油に譲ったとはいえ,今でも世界の1次エネルギ供給量の25%を占める。日本の電力に関していえば14~15%,主役ではないが,将来にわたって,なくてはならないエネルギ源であることは間違いない。
 石炭は炭素(C)を多く含むから,どうしても地球温暖化に対して不利で,肩身が狭い。だからといって使わないわけにはいかない。このため,無駄なく使うニーズは,ほかの燃料以上に強い。
 石炭を燃やす火力発電所の効率は着々と上がってきた。現在,新しい発電所では効率44%弱というものも現れた(図)。これをさらに上げたい。
 LNG(液化天然ガス)を燃やす場合には複合サイクルという手がある。燃料をまずガスタービンエンジンで燃やして発電し,その排熱をボイラに送り,その蒸気でまた発電する。これなら発電効率48~50%はいく。ところが,この方法は石炭には使えない。石炭は固体燃料だからガスタービンエンジンに入れられない。

日経ものづくり 特報
図●各種石炭火力発電所の発電端効率
すべて高位発熱量基準。LNG燃料のガスタービン複合サイクルも参考に並べた。