日経ものづくり 材料力学マンダラ

第11巻
たわみに強い断面形状は

広島大学大学院教授 沢 俊行


●断面積一定で,梁のたわみを抑える
●たわみ一定で,梁の断面積を減らす
●鋼をアルミにそのまま置き換えたら,たわみは3倍に


 前回の復習を兼ね,今回はまず実践的な問題から始めます。
 図(a)は,たびたび引き合いに出す,土砂崩れを防ぐための鋼製の「矢板(鋼矢板)」。そこに,長さlが10.8mの「腹起こし」と呼ぶ補強材が水平に巻き付けられています。材料は「H」字型の断面を持つ「H型鋼」で,ここに鋼矢板を介して作用する土圧は等分布荷重w(=3.48×103N/m)と仮定します。さて,問題。この腹起こしの断面が,(1)「H」字型に見えるように取り付ける〔図(b)〕(2)90°回転させ「I」字型に見えるように取り付ける〔図(c)〕─二つのケースでは,どちらの方が梁に作用する曲げ応力は小さくなるか。
 考えていただけたでしょうか。要は,(1)と(2)では断面係数Zが異なり,それによって曲げ応力が違ってくるのです。正解を見ていきましょう。

日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●土砂崩れを防ぐ鋼矢板
(a)補強材としてH型鋼を水平に取り付ける。(b)「H」字型に見えるように取り付ける場合と,(c)「I」字型に見えるように取り付ける場合で,補強材に作用する曲げ応力が小さくなるのはどちらか。