日経ものづくり 特報

「第39回東京モーターショー2005」速報

まだ間に合う自動車の祭典
一足先の技術を知る

千葉県の幕張メッセで開催されている「第39回東京モーターショー」。今回も,世界で初めて発表されるクルマが79台,日本初の発表が120台と,多彩なラインアップが披露されている。もちろん部品メーカーの展示も完成車メーカーに引けを取らない。ここでは,本誌特別取材班が会場を取材し,注目した技術を紹介する。本誌が読者の手元に届くころはまだ会期中(会期は2005年11月6日まで)。興味を持った方は,ぜひ実物をご覧に出掛けていただきたい。 (モーターショー特別取材班)

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モータ直結で30%燃費向上
 富士重工業のコンセプトカー「B5-TPH」は,ターボエンジンとモータを組み合わせた「TPH(ターボ・パラレル・ハイブリッド)」エンジンを搭載する(図)。排気量2Lの水平対向4気筒ターボエンジンとトランスミッションの間に直径320×幅60mmほどの薄型モータを組み込んだ。ターボエンジンにミラーサイクルを採用して燃費を向上させるとともに,ミラーサイクルの弱点である低回転域での出力低下をモータで補う。
 モータの最大出力は10kWで,最大トルクは150N・m。ミラーサイクルとハイブリッド化によるエネルギの回生,エンジンの摩擦低減などで,従来に比べて30%程度の燃費改善が見込める。
 B5-TPHには,同社とNECが合弁で設立したNECラミリオンエナジーのマンガン・リチウム・イオン2次電池を採用。今後は,実用化に向けたコスト削減のため,通常のエンジンとの部品の共通化を目指す。

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図●富士重工業のハイブリッドエンジン「TPH」

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モータなしでエンジンを再始動
 アイドリングストップ機能では,再始動時にモータを利用するのが一般的。マツダが展示した直噴エンジンをベースとした「スマート アイドリング ストップ システム」は,この常識をくつがえすもの(図)。モータを使わないので,静かで素早く再始動する。「3年以内に実用化したい」(同社社長の井巻久一氏)。
 原理は以下の通り。エンジン停止時は複数あるシリンダのうち,圧縮行程途中にあるシリンダと膨張行程途中にあるシリンダを,ほぼ同じ空気量となるような位置で止める。再始動時には,圧縮行程途中にあるシリンダに燃料を噴射し,点火してクランクを逆回転させる。シリンダ内は大気圧に戻っているため,強い爆発力は得られず,回転するのはせいぜい80~90°。ただし,膨張行程途中だったシリンダは逆回転により圧縮を始めており,このシリンダに燃料を噴射して点火することで,正回転方向に本格始動させる。

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図●マツダの新しいアイドリングストップ機構