パナソニックは2015年8月19日、「筋力トレーニング機器 ひざトレーナー」の技術セミナーを開催した。ひざトレーナーは、歩行時の筋肉に電気刺激を与えて、ひざまわりの筋肉を効果的に鍛えるトレーニング機器。パナソニックのセンサー技術と久留米大学医学部が開発した「ハイブリッドトレーニング」を利用したものとなる。

 ハイブリッドトレーニングとは、人間の動作(自力運動の負荷)と電気刺激(他力運動の負荷)を組み合わせたトレーニングのこと。ひざ屈伸などの運動では、伸びようとする筋肉(拮抗筋)と縮もうとする筋肉(主動筋)がある。運動のタイミングで拮抗筋に電流を流すと、拮抗筋は収縮しようとして抵抗が生まれる。この結果、拮抗筋と主動筋の両方に負荷がかかり、効果的に筋力をアップできるという。

宇宙探査で必要となる小型トレーニング機器

JAXA 有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙医学生物学研究グループ 技術領域主幹 主幹開発員の大島 博氏
JAXA 有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙医学生物学研究グループ 技術領域主幹 主幹開発員の大島 博氏
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 セミナーではまず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙医学生物学研究グループ 主幹開発員である大島 博氏が登壇した。大島氏によると、国際宇宙ステーション(ISS)に長期間滞在する宇宙飛行士は、身体能力を維持するために週6日、1日2時間ほどをエアロバイク、トレッドミル、抵抗運動機器のトレーニングに費やしているという。微小重力状態のISS内で運動を怠っていると、筋肉の萎縮や骨量の減少が発生してしまうためだ。何もしなければ、「ふくらはぎの筋肉は宇宙空間に10日間滞在しただけで10%も減少してしまう」(大島氏)。

 ISSの限られたスペースに設置するトレーニング機器は、できるだけ小さいほうが望ましい。スペースシャトル計画の終了にともなって、ISSへの輸送業務は「トラック1台分の荷物を運べる」(大島氏)スペースシャトルから、ロシアのソユーズや日本のこうのとりなどに切り替わっており、運べる荷物の量も限られている。さらに、ISSを起点とする宇宙船で月や火星への有人宇宙探査を目指す「国際宇宙探査」では、コンパクトかつ効率的なトレーニング機器へのニーズはより切実なものとなる(関連記事「国際宇宙探査ロードマップ」)。このためJAXAでは久留米大学と共同で、ハイブリッドトレーニングの研究に取り組んでいるという。