本記事は、日本機械学会発行の『日本機械学会誌』、第118巻第1160号(2015年7月)に掲載された記事の抜粋(短縮版)です。日本機械学会誌の目次、購読申し込みなどに関してはこちらから(日本機械学会のホームページへのリンク)

[1]はじめに

 高圧ガスや危険物設備における高経年化による保安上の最重要課題の一つは、設備の構成材料の経年劣化である。中でも腐食減肉は重要な管理項目で、例えば高圧ガスの製造施設における事故の20%以上が腐食管理不足といわれている。

 炭素鋼は、設計時よりある程度の腐食減肉を腐食代の考えで許容している場合が多い。しかし、平均的な腐食速度は十分小さくとも、長期間の使用により腐食が局在化し、部分的に平均腐食速度の数倍の速度で腐食が進行する場合がある。

 減肉管理は、開放検査などで目視可能な場合は目視で腐食部位を特定し、その部位の減肉深さをデプスゲージなどで測定する。こうして検査の網羅性を確保しつつ危険部位の減肉深さの管理も可能となる。しかし、目視の困難な機器や部位では超音波肉厚計による定点測定により管理されてきており、検査の網羅性の点で課題を残していた。筆者らはタンク底板や反応器などの容器および配管の目視の困難な部位の面的(連続)超音波肉厚測定システムを開発し、実用化してきた。