両面ガラスの太陽光パネルによる信頼性の向上について、中国の大手太陽光パネルメーカーの日本法人であるトリナ・ソーラー・ジャパン(東京都港区)が開催した発表会の内容から紹介している。従来の樹脂製バックシートを使った太陽光パネルにおける信頼性の課題を、2枚のガラスで挟み込んだ密閉構造によって解消する(関連ニュースメガソーラー探訪の関連記事)。

 両面ガラスの太陽光パネルは、今後のメガソーラー(大規模太陽光発電所)の信頼性の向上を可能にする技術として注目されている。従来の樹脂製バックシートによる封止の課題とされる、長期信頼性が向上する可能性もある。

 従来の太陽光パネルの課題の一つに、PID(potential-induced degradation)と呼ばれる現象がある()。特定の条件において、太陽光パネルに高い電圧がかかり、出力が大幅に低下する。太陽光パネルや発電システムを構成する部材の種類のほか、高温・高湿、システム電圧などの条件が影響して生じるとされている。

図●電圧、湿度、温度などの条件で発生するPID現象
太陽光パネル、発電システムの両方から対策が講じられる(出所:トリナ・ソーラー・ジャパン)
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 トリナ・ソーラーによると、PID現象は、約3年前に広く知られるようになり、関係者の注目を集めた。太陽電池セル(発電素子)から、パネルのフレームに電流が漏れることによって、カバーガラス内のイオンが移動し、セルの電気的特性が変化した結果、パネルの出力が低下するという。

 主に、欧州に設置されたパネルから、PID現象を生じたパネルが見つかった。日本メーカー製のパネルでも、PID現象が生じたパネルが、一定規模で発見されたようだという。その後、国内外の太陽光パネルメーカー各社は、PID現象への対策を講じている。

 太陽光パネルにおける対策には、ガラス基板への酸化膜の形成や、封止材に透湿性がより低いEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)の採用することなどが知られている。イオンの移動を抑えたり、湿気の侵入を防ぐことで、PID現象の発生を抑制する(図左)。

 PID現象は、高湿などの環境下で、フレームに電流が漏れることが起因となる。フレームがなく、さらに両面をガラスで封止しているパネルならば、従来のフレーム付きパネルで講じられているPID現象の抑制というレベルではなく、PID現象を根源から断つことができると強調している(図右)。

(次回は、9月3日に掲載予定)