グリーベンチャーズが継続的に開催しているヘルスケア関連イベント「Digital Health Meetup」。第3回となる「Digital Health Meetup Vol.3」が、2015年7月28日に東京・六本木ヒルズ森タワーで開かれた。

 キーノートスピーチを担当したのは、米Acucela社 会長、社長兼CEOであり、慶応義塾大学医学部客員教授を務める窪田良氏。窪田氏は、大学時代から一貫して眼疾患の分野に取り組んできた。慶応義塾大学医学部を卒業後に虎の門病院にて臨床医を務め、1997年には緑内障原因遺伝子である「ミオシリン」を発見。緑内障研究では名誉ある「須田賞」を受賞した。

窪田氏
[画像のクリックで拡大表示]

 この実績をもとに米国・シアトルのワシントン大学へと渡り、その後に大学発のバイオベンチャーとして2002年4月にAcucela社を創業。以降、米国にて研究開発を進めながら、2014年2月には東証マザーズに上場を果たしている。

 Acucela社が開発中の医薬品は、「目のアルツハイマー」(窪田氏)とも呼ばれる加齢黄斑変性の治療薬。しかも点眼薬や眼球注射ではなく経口薬(飲み薬)である。創薬に挑むベンチャーというだけでも非常に高いハードルだが、窪田氏は開発の実情を次のように語る。

 「医薬品は規制が大きく絡んでくるため、平均開発期間が約10~12年と言われている。つまり、プロダクトのライフサイクルがIT産業と比べると非常に長いのが特徴だ。

 我々は2002年に創業し、2005年からこの取り組みを始めた。実際に化合物を作り、患者に試して薬剤として認可されるが、その確率は約3万分の1。一般的に大手製薬企業に就職した医薬品開発の研究者が、一生会社に勤めている中で、自分が作った化合物が認可されることがほとんどないままにリタイアしていく。それほどまでに医薬品開発の分野は成功確率が低い」

 加齢黄斑変性は、目の中心部分が変性することにより視力が低下してしまう病気で、2012年の調査では米国で約1180万人、世界では約1億2700万人の患者数となっている。

 「網膜の中に毒性物質が溜まって加齢黄斑変性が起きる。例えば皮膚も光が当たり続けると皮膚がんになるなど、光障害が起きて老化を加速する。その原理は目も同じだ。そこで毒性物質が出すぎてしまうのを抑えるために、“飲むサングラス”として開発した。皮膚に対する日焼け止めがあるにもかかわらず、目にはそうした薬がなかった。ならば、飲み薬でそれを実行しようと考えた」(窪田氏)。

 開発中の医薬品はようやく最終段階の臨床試験に入り、段階を経るごとに病変を抑制する効果が現れている。米国と欧州で実際の患者に試してもらい、2016年夏に臨床結果が判明する予定だ。