普段運動しない人を自治体の健康づくりプロジェクトに呼び込むにはどうしたらいいか――。

 こんなテーマを掲げてヘルスケア事業に携わる専門家が、「SPORTEC 2015」(2015年7月28~30日、東京ビッグサイト)で議論を交わした。登壇したのは、ヘルスケア専門の広告代理店、マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)の西根英一氏、健康ビジネスの企画開発などを手掛けるスポルツ代表取締役の大川耕平氏、自治体にヘルスケアのプログラムを提供するコーチズ代表取締役の杉浦伸郎氏。コーディネーターはクラブビジネスジャパン代表取締役の古屋武範氏が務めた。

 厚生労働省の国民健康・栄養調査(2013年)によれば、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人の割合は男性で33.8%、女性で27.2%だった。運動習慣のない人に、フィットネスに興味を持たせるという命題に対して、大川氏は「行動変容のステージは無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期に分かれるとされている。無関心期から一気に実行期に移行するのは不可能。1つずつ丁寧に段階を踏むアプローチが必要だ」と話す。

情緒的な価値を訴求せよ

 西根氏は「ヘルスケアビジネスは、機能的な価値ばかりを訴える傾向にあるが、それでは受け手に響かない。情緒的な価値をどう付けるかが大切」と語る。東京ディズニーランドを例に挙げて「ディズニーランドは遊園地だが、単なる遊園地ではなく『夢と魔法の王国』として演出している。そこに多くの人が魅力を感じている」とし、ブランディングが重要であると説明した。

マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)の西根英一氏
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 同氏は東日本大震災の被災地の復興支援プロジェクトとして、石巻の方言を使ったラジオ体操「おらほのラジオ体操」をプロデュースした経験を持つ。CDを販売して一部を義援金とするビジネスモデルだ。「おらほのラジオ体操は、コミュニティーの再生や住民の心のヘルスケアを第一義として企画し、結果的に体のヘルスケアにも役立った。自治体の活動や教育現場、企業や工事現場などに広く受け入れられたのは、『笑える』『面白い』『気持ちが明るくなる』といった情緒的価値を訴求できたから」(西根氏)。